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Washington Files

2020年7月27日

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斎藤 彰 (さいとう・あきら)

ジャーナリスト、元読売新聞アメリカ総局長

1966年早稲田大学卒業。68年米カリフォルニア州立大学バークレー校大学院修士課程修了、70年読売新聞入社。ワシントン常駐特派員を2度務めた後、アメリカ総局長、東京本社取締役調査研究本部長などを歴任。著書に『中国VSアメリカ』『アメリカはカムバックする!』(いずれもウェッジ)がある。

コロナ禍と経済的大打撃、未曽有の“異常な選挙年”

 上記のような状況変化に加え、さらに今年は、4年前には全く考えられなかった未曽有の“異常な選挙年”となった。それがコロナ禍と経済的大打撃だ。

 まず、選挙戦終盤にかけ共和党地盤の南部諸州において、コロナ感染が急速に拡大し始めた結果、トランプ再選委員会の選挙戦略に大きな誤算が生じ始めた。各地で多くの熱狂的支持者を集め予定していたトランプ大統領自身による得意のアジ演説集会も不可能となり、今後の遊説日程も見通しが立てられなくなってきた。

 さらに、同陣営が最重要視していた4年に1度の大規模な「共和党全国大会」も事実上、中止の事態に追い込まれた。同大会は当初、拠点州のひとつであるノースカロライナ州シャーロットに各州代議員含め4万人以上の支持者を一同に集めで開催予定だったが、先月、州全体の感染者数急増を懸念した民主党州知事が受け入れを拒否したため、急遽、フロリダ州シャクソンビルに変更された。ところが、そのジャクソンビルも、今月上旬から一挙に感染拡大が深刻化してきたため、大統領自身が去る23日の記者会見で、“3蜜”による感染拡大の予防措置として「大規模イベント中止」を発表、大会のハイライトだった「指名候補受諾演説」登壇も回避し、代わってオンラインでのバーチャル・スピーチを行うことを明らかにした。

 一方の民主党側も、当初は7月13日から4日間、ウイスコンシン州ミルウォーキー市で開催予定だったが、8月17日~20日に延期、規模も5万人程度の大集会から大幅に縮小「300人程度」の関係者のみに限定して実施することになった。

 ただ、もともとバイデン民主党候補はコロナ感染が始まった今年前半から、街頭演説はほとんど避け、デラウェア州の自宅地下を“選挙事務所”にしてもっぱらオンラインによる選挙戦を展開してきた。それでも、最近に至るまで、再選目指す大統領相手に支持率で大きくリードを保ってきた。

 両陣営にとって、コロナ禍による選挙戦への影響は大きいものの、今のところ、共和党陣営にとってのダメージはより大きいといえる。

 さらにトランプ再選委員会にとって、致命的にもなりつつあるのが、経済的影響だ。

 今年中盤までの展望では、全体の景気は一時沈滞したものの、コロナ禍の早期収束にともない、第3四半期には「V字」回復を見込んでいた。しかし、その可能性は著しく遠のきつつある。

 労働省が去る23日公表したところによると、先週1週間の全米での失業保険申請者数は前より10万人増え、140万人に達し、過去15週間の減少傾向にストップがかかった。この結果、累積失業者数は3000万人を突破、今後さらなる増加が懸念されている。

 大手企業の倒産件数も急増しつつある。法律サービス大手Epic Global社の集計によると、今年に入り6月末までの間に、倒産による会社更生法適用を申請した会社は3600社を突破、前年同期比26%増となった。この中には、レンタカー大手Hertz、量販チェーンJ.C.Penny、高級デパートNeiman Marcusなどが含まれる。

 全体の経済見通しについて、Moody’s Analytics社のチーフエコノミスト、マーク・ザンディ氏は23日、デジタルメディア「Politico」とのインタビューで「このまま政府が抜本的景気浮揚策を打ち出さない限り、経済のリバウンドはおろか、再び景気後退を覚悟しなければならない」と警告している。

 昨年末まで「史上前例のない好況」を勝ち誇り、再選への自信を強めてきたトランプ氏だが、ここに至り、その経済が逆に選挙の足かせになりつつある。

  
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