2024年12月19日(木)

Washington Files

2020年7月20日

 11月米大統領選に向けたトランプ大統領とバイデン民主党候補との論戦がし烈化する中で、どちらが対中姿勢でより強硬かをめぐる話題が広がっている。

(Pixfly/gettyimages)

 アメリカでは今世紀に入り、中国の経済的、軍事的台頭とともに、「新冷戦」への懸念など、米中関係への関心が高まりつつある。とくに、今年の大統領選では、トランプ大統領が、安価な中国製品流入で打撃をこうむってきた中西部諸州の農家、中小企業擁護の立場から、対中経済制裁措置などを相次いで打ち出してきた。さらに、コロナウイルス感染が全米を覆い始めて以来、「チャイナ・ウイルス」との表現まで使い、中国への非難をエスカレートさせている。

 一方のバイデン氏も昨年、大統領選への出馬表明以来、主だった外交問題発言は控えてきたものの、副大統領だったオバマ政権当時から、対中外交では安保問題含め、共和党以上に厳しい姿勢を貫いてきた。

 しかし、トランプ氏がここに来て劣勢挽回のため、一段と対中強硬姿勢を鮮明にする一方、「バイデンは中国にへっぴり腰wimpy」といった批判を繰り返しているため、最近になって本腰で応戦せざるを得なくなってきた。

 その背景として、アメリカの有権者が近年、党派を問わず、中国への警戒を強めてきたことが挙げられる。

 去る4月21日、「Pew Research Center」が公表した世論調査結果によると、米国民の66%が「中国に対し好感を持てない」と答え、62%が「中国は脅威」とみなしていることが明らかになった。また、習近平指導体制についても71%が「信用できない」と答えた。

 「対中脅威」を感じる主な理由として「中国に仕事を奪われた」「貿易赤字をこうむった」などの要因が挙げられているという。

 さらに党派別に同様の質問をしたところ、共和党支持者の72%とともに、民主党支持者の間でも62%が「中国を好感できない」と答えた。もはや、対中不信が党派を超え広がっていることを示している。

 トランプ政権ではとくに最近、こうした世論動向を踏まえ、中国問題が今年の大統領選の重要争点と位置付け、対中国非難を強めつつある。

 ポンペオ国務長官は先月18日、「デトロイト経済クラブ」での講演の中で、「中国の対外政策は敵対的belligerentであり、貿易政策は最も略奪的predatoryだ」「中国指導部は開放的でグローバリズ化の一環などと言っているが、これはジョークにすぎない」などと激しい言葉で中国の‟罪状”に言及した。

 続いてオブライエン大統領補佐官(国家安全保障担当)も同24日、アリゾナでの共和党集会で「中国共産党はマルクス―レーニン主義の一党独裁であり、習近平国家主席は自らを『スターリンの後継者』と自認している」ときめつけた。

 政策面での対中強硬アピールも目立つ。

 去る5月下旬には、香港における民主化運動に対する中国の締め付け措置を受け、香港に適用してきた「優遇措置撤廃」方針を発表、6月29日にはより具体的に、軍事転用可能な技術の対香港輸出優遇措置の停止に踏み切った。

 そして今月14日には、大統領がホワイトハウス・ローズガーデンで自ら記者会見し、香港の自治侵害に関わった当局者たちへの制裁を盛り込んだ「香港自治法案」と、対香港優遇措置の撤廃の二つに署名したことを明らかにした。


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