2022年8月8日(月)

WEDGE REPORT

2020年8月25日

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角 潤一 (すみ・じゅんいち)

在イラン日本国大使館 一等書記官

イラン・ペルシャ語専門の現役外交官。1998年外務省入省。ロンドン大学東洋アフリカ研究学院で中近東学の修士号を取得。外務本省でイランやエネルギー安全保障等を担当し、イラン、イラク、アフガニスタン、ニューヨーク(国連代表部)で勤務。19年10月から現職。

 このような状況下で、イランは、体制の生き残りをかけた策を絶えず模索している。イランが注視しているのが、11月に控える米大統領選挙の行く末だろう。イランとしては、大統領選後の米国と対峙していく上で、自らが使える手札をできるだけ増やしておきたいのだ。

(出所)各種資料を基にウェッジ作成 写真を拡大

 しかし、現実は、米国による「最大限の圧力政策」の下、欧州へのフラストレーションが高まる中で、東方へ押しやられた格好であり、とりわけ、制裁下でもイラン産原油を購入し続けてくれ、最大の貿易相手国である中国へ向かわざるを得なかった、というのがより正確だろう。

 では、英メディア「イラン・インターナショナル」が入手したとして公表している計画(案)の中身を少し見てみよう。ただし、執筆している8月7日現在、イランも中国も公表していないため、その真偽は確認できない。だが、イラン外務報道官は、あらゆる文書は交渉が終了するまで効力を持たないとしつつ、この計画(案)を拡散しないようにと述べており、偽物だとは言っていない。

 各種報道では、「経済・安全保障のパートナーシップ協定」などと呼ばれているが、ペルシャ語原文「Barnameh Hamkarihaye Jame’(2 5 Saleh)Iran va Chin」を忠実に訳せば「イラン・中国(25年間)包括的諸協力計画」である。

 この計画は、16年1月、中国の習近平国家主席がイランを訪問し、ハメネイ師と会談した際に提案されたと報じられている。その際の両国の「包括的戦略パートナーシップ共同宣言」にも25カ年計画締結に向けた協議が記されており、今回の計画(案)の序文でも触れられている。

 ペルシャ語で全18ページ、「最終版」と記され、日付は1399年のホルダード月(これはイラン暦で、西暦では今年の5月21日~6月20日に当たる)。表紙の頭にはイラン外務省のクレジットが付されており、冒頭のザリーフ外相による国会演説でも、イラン側が草案を起案したと述べている。

「一帯一路」に積極的

 草案は、両国が貿易、経済、政治、文化、安全保障の各分野で緊密なパートナーであると強調する序文から始まり、使命や基本的な目的などを定めた九つの条文と三つの附属書(Ⅰ:基本目標、Ⅱ:協力分野、Ⅲ:実施手段)から構成されている。特に目についたのは、「一帯一路」計画への言及が少なくとも10回もあることだ。イランが積極的にこれに組み込まれようとしていることがうかがわれる。

 また、第5世代(5G)移動通信システムの開発、軍事面での協力(教育・研究分野、共同訓練等)、ホルムズ海峡に近いジャスク港の開発など、今後の発展次第ではイラン国民の反発や米国など西側諸国の懸念を引き起こす項目も並んでいる。中国側としてもこれらを将来的な足掛かりにしたいとの思惑があるのかもしれない。

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