2024年11月25日(月)

中小モノづくり企業 海外進出のポイント

2012年7月17日

 ダイヤ工芸の創業者である石塚勝社長(70)は言う。「開発・試作を終えて量産の話になると、ほぼ例外なく海外でということになります。『海外に工場がないのであれば、試作を打ち切らざるを得ない』という話もありました」。

「人の縁」が運んできた商機

 青山プラスチック塗装が、ベトナムへの進出を決めたのは2010年。同年秋に、博臣専務は、青山氏らとベトナム視察に赴いている。その後、青山氏はベトナム南部の商業の中心地・ホーチミン市に隣接するロンアン省カンドゥック地区に現地法人を設立した。ベトナム政府が提供する工業団地は家賃が高く、民間経営の工業団地を選んだという。

 2011年10月に、青山氏に再び誘われベトナム視察に訪れた博臣専務は、冒頭の言葉を青山氏から聞かされた。このとき視察した日系企業の中に、以前同社が製品サンプルを送った会社もあった。「1年後には仕事量が倍になるので、印刷の量産ができるメーカーが進出してくれれば助かる」という話も聞いた。

2012年3月、ホーチミン市に隣接するロンアン省に現地法人「CONG TY DAIYA」(コンティ・ダイヤ)を設立。

 今がベトナム進出の絶好のチャンスと感じた博臣専務は、社長を始め、家族を説得。2012年9月の現地進出を目指して計画書を作り、資金調達のために金融機関を回り始めた。青山氏の厚意で、青山プラスチック塗装が現地法人を置いている工場内の約半分のスペースを使わせてもらえることになり、印刷機械も、同社の現地法人にあるものも借りて操業できることになった。

 海外進出が初めての中小企業にとって、信頼できるパートナーの存在ほど心強いものはない。

進出前の情報収集と人脈作り

 一方で、博臣専務は現地情報の収集にも力を入れていた。中小企業の海外進出を支援する民間団体「海外事業展開事例研究会」が定期的に開催しているセミナーに足を運び、ベトナム進出の成功事例などに耳を傾け、現地の情勢から人々の国民性、土地柄までを学び、懇親会等を通じて人脈も広げていった。

 こうして進出計画が着々と進むなか、2012年3月に、青山氏から思わぬ連絡を受ける。「量産の仕事が取れた。印刷の仕事もたくさんあって、この春から作業がスタートする。進出を急いでもらえないか」。

現地法人での作業の模様。印刷用の治具に品物を取り付けている。

 予想もしない申し出だった。進出前に大きな仕事が舞い込むという幸運を手にしたのである。博臣専務は進出予定を早め、ベトナム政府に対する投資ライセンスの申請、工場の入居契約手続き等を急いで行った。彼の弟の妻がベトナム人で、彼女の知り合いに、投資ライセンスの取得代行業者がいたこともあり、3月下旬に認可が下りた。

 ここに晴れて、ダイヤ工芸のベトナム現地法人「コンティ・ダイヤ」(CONG TY DAIYA)が誕生したのである。5月には本社の加工設備を大量に移動した。「コンティ」とはベトナム語で会社の意味だ。


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