コンティ・ダイヤの事業内容は、プラスチック成型品の印刷および加飾(ホットスタンプ、シルク印刷等)。最初は、青山プラスチック塗装経由の印刷案件をこなしながら、現地の日系企業に営業をかけて仕事を増やす。その一方で、日本国内での営業を強化して、東南アジアで最終組立を行う製品の加工を受託し、ベトナムの工場で量産していく方針だ。
現地法人の従業員は30人。ベトナム人である弟の妻の親戚と、日本企業で3年間研修を受けた、日本語の話せる男性が博臣専務のアシスタント。残りの女性28人が、青山氏の紹介と直接雇用したワーカーである。
印刷機のオペレーションを担当する彼らだが、プラスチックを扱う作業はまったくの未経験。指導をするにも、はじめはコミュニケーションに苦労した。
現地ワーカーの心を開く
「最初の頃、彼女たちは、外国人の私と目を合わせてさえくれませんでした。これではいけないと思い、少し覚えたベトナム語の単語を話しながら、従業員たちの中に溶け込んでいく努力をしました」と博臣専務。言葉のカベも大きく、双方が伝えたいことをうまく伝えられず、苦しい思いをしたが、工夫を重ねてなんとか乗り切った。
たとえば印刷に不具合が生じた場合がそうだ。
「インクのにじみやかすれなど、さまざまな印刷の不良の状態を、目で見て確認できるサンプルボードを作りました。そのうえで弟の妻に、用語を1つひとつベトナム語に翻訳してもらい、従業員たちに教育しました。いまでは彼女たちは『シャチョウ、ニジミ、カスレ』などと、日本語で不具合を報告してくれます」。
ほかにも、新興国におけるビジネスに苦労は尽きない。たとえばベトナムでは材料・部品の現地調達率が低く、同社も印刷用インクや製版の調達に苦労した。結局、製版は内製化し、日本で製作してベトナムに持ち込んだ。電力供給も不安定で、日中に数時間停電することも日常茶飯事である。
海外進出を「事業承継」の機会として活用する
言葉も知らない現地に乗り込み、新たなビジネスを一から立ち上げるという意味で、同社にとってベトナム進出は「第二の創業」といえるものかもしれない。博臣専務が「ベトナムに進出したい」と切り出したとき、創業者である勝社長は「ベトナムで自分なりに形を作り、安定軌道に乗せることができたら、俺は社長を降りる。そういうつもりでやってくれ。絶対に失敗は許されない」と話した。