2024年4月24日(水)

From LA

2020年8月25日

シリコンバレー周辺に住まなくても仕事ができる

 しかし皮肉なことに、シリコンバレーの企業はコロナ騒動によりいち早くリモートワークを取り入れ、その結果「シリコンバレー周辺に住まなくても仕事ができる」ことに気づいた人々が真っ先にカリフォルニア州を去り始めた。上記の下落幅でトップに入るサンタ・ローザ、バークレーもシリコンバレーの通勤圏内に入る。

 また、過去の実績から見ても、来年以降住宅価格が大きく下落するのは予想できる。2008年のリーマンショック後、2009年の不動産価格は40%も下落した。2006年から2007年のピーク時に中間価格は60万ドルを超えたが、2009年には34万ドルに落ち込み、さらに2012年には32万ドルまで下がった。2019年にようやく52万ドルまで回復したが、今回のコロナウィルスにより来年以降は再び大きく下がる可能性がある。

 もちろんリーマンショックの引き金となったのは住宅のサブプライムローンであり、大量の任意売却や差し押さえ物件が出た当時とは異なるかもしれない。しかしロサンゼルスの6月の失業率が19.4%であることを考えると、今後不動産への投資が大きく鈍ることは間違いない。

 実際に筆者の住む地域でも売却物件が目に見えて増えている。比較的価格が高い今のうちに売り逃げしたい、と考える人がそれだけ増えているのだろう。そして住宅を売却する人のほとんどがカリフォルニアから他州への移住を目的としている。

 さらに追い打ちをかけそうなのが、現在州議会で提案されている「レント25」と呼ばれる条例だ。AB828と名付けられた条例は「すべての州内の賃貸物件オーナーに対し、現在の賃貸価格を25%下げるよう強制する」というものだ。コロナ禍により収入減に苦しむ人々への救済及び現在の高騰した賃貸価格を抑えるためのものだが、カリフォルニア・アパートメント協会などが大きく反発している。

 この条例は11月の大統領選挙時に賛否を問う投票が行われる。もし可決されるようなことがあれば、大型の賃貸物件売却が急ピッチで進むことも考えられる。しかしそのように人口流出が続くと、コロナに加えて大規模な山火事で完全に疲弊する州経済にとって追い打ちのような打撃となる。州政府にとっては頭の痛い問題だ。

  
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