立花聡の「世界ビジネス見聞録」

2020年8月30日

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立花 聡 (たちばな・さとし)

エリス・コンサルティング代表・法学博士

1964年生まれ。早稲田大学理工学部卒。LIXIL(当時トステム)東京本社勤務を経て、英ロイター通信社に入社。1994年から6年間、ロイター中国・東アジア日系市場統括マネージャーとして、上海と香港に駐在。2000年ロイター退職後、エリス・コンサルティングを創設、代表兼首席コンサルタントを務め、現在に至る。法学博士、経営学修士(MBA)。早稲田大学トランスナショナルHRM研究所招聘研究員。

 

高級店はなぜ苦戦を強いられているのか?

 特徴その2、このクラスの飲食店はホテルのような割引優待を一切提供していない。つまり、普段の料金形態で運営している。そもそも普段の料金でもそんなに高くない。むしろこれ以上割引したら、経営が成り立たなくなるくらいだ。

 ホテルの場合、コロナ期間中の運営をみると、高級ホテルが大幅な値下げをして集客しているのだが、中級以下のビジネスホテルやエコノミーホテルは元々格安価格であるから、値下げの余地がなく、価格的優位性を失う。一方、高級ホテルは設備がよく断然優位性を有し相対的割安感が際立つので、客は高級ホテルの割安パッケージに流れる。最終的に悲鳴を上げているのは中級以下のエコノミータイプホテルだ。

 しかし、レストランはどうも逆の状況になっている。

 マレー半島東海岸のA高級リゾートの近くにあるレストランW店は、数卓しかない小さな店だが、連日満席の状態が続いている。村の食堂といった簡素な店構えなのに、駐車場には高級車が続々と入ってくる。身なりの良い富裕層客がやや「身分不相応」な格安食堂で頬張っているのである。

富裕層客が高級車を乗り付ける、村の食堂W店

 高級車のナンバーはほぼクアラルンプール・ナンバーになっている。リゾートに泊まっている客が割高なホテル館内食を止めて、「外食」しているのではないかと思われる。あとからSNSをチェックしたら、「Aリゾートに泊まったら、近所のWレストランがおすすめ」「Aリゾート滞在中に毎日W食堂で食べていた」といった類の書き込みが多数見つかった。予想が当たった。

 Aリゾートのレストランは朝食だけ客がたくさん入るが、夕食となれば人影まばら。宿泊パッケージに含まれている朝食しか食べない、というのが客の消費傾向だ。さらにホテルのレストランはいちばん安いハウスワインでも1本6000円以上もする。Wレストランの場合、アルコール持ち込み料はわずか250円。しかも交渉したらタダにしてくれた。余談だが、マレーシアのミドルクラス以下の中華レストランは大体酒持ち込みOK。私はいつも卸売業者から安く仕入れた日本の焼酎を持ち込んで飲んでいる。

無料持ち込みの焼酎を飲みながら中華料理をいただく

 高級飲食店は苦戦を強いられているようだ。たとえば、ラグジュアリーホテルS系列の場合、宿泊客の館内レストラン利用に50%オフの割引を提供している。

 一般的に飲食店の食材費にあたる原価率は30%が目安だと言われている。その上に人件費等その他経費を上乗せすると、軽く60~70%を超える。たとえ家賃がゼロであるホテル直営のレストランでも、50%の割引だと、利益がゼロか下手をすると赤字ではないかと思われる。

 先日メールがやってきた。世界展開するあの名門日本料理「NOBU」のクアラルンプール店の宣伝。コロナ期間中にお任せコースを398リンギット(約1万円)の特別料金で提供する。しかも2人のペアで注文すれば、1人分が無料になると。NOBUのお任せコースを5000円で食べられるとは驚く。店に利益は出るのだろうか。

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