2024年7月16日(火)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2020年9月5日

「中共非中国(中共は中国に非ず)」

 いまや「中共非中国(中共は中国に非ず)」の姿は日に日に明らかになりつつある。マルクス・毛沢東を戴く中共に戻ることがあってはならない。鄧小平が一代で切り開いた「中国の特色ある社会主義」の道を着実に歩むことで、中共は自らの過ちを糺し、自らを救い、中国を救うことが可能となるのだ。

 現在の中国が直面する内憂外患状況の根本原因は、やはりマルクス主義への回帰にある。一方、アメリカは「マルクス・レーニン主義(邪悪なソ連帝国主義)を歴史的に葬り去ったレーガン主義」に回帰した。「第2のレーガン」を自負するドナルド・トランプ大統領は中共政権を地獄から舞い戻ったゾンビと捉え、「中共政権はマルクス・レーニン主義政権」「習近平はスターリンの後継者」と糾弾する。

 富強への猛進を、外からの強制で修正軌道に向かわせることは容易くはない。現在の習近平路線が失敗するとしたら、その要因は内部に存在するはずだ。「習近平時代の中国の特色ある社会主義思想は21世紀のマルクス主義」の道から引き返し、マルクス・毛沢東からの脱却を目指した鄧小平の「中国の特色ある社会主義」に還ることが、中共が自らを救う唯一無二の道である。

 獅子身中の虫であるマルクスを殺すことで、鄧小平の改革開放は動き出した。誰が「中国の特色ある社会主義」の上に習近平の名を冠し、「21世紀のマルクス主義」などと言い募るのか。佞臣(ねいしん)は習近平をマルクス並みと持ち上げ、殺し屋は鄧小平の旗を振って鄧小平の功績をぶち壊す。すでに状況は明らかになった。中共は躊躇している場合ではない。

 ――かくして「習近平は鄧小平に還れ」と言う主張につながることになる。

 鄧小平が掲げた改革開放路線と習近平政権の対外強硬路線は対立するわけではなく、「韜光養晦」の必然的帰結が「一帯一路」「2025中国製造」ではないのか。この点は考えの分かれるところだろうが、共産党の一党独裁を堅持すべしという点に関しては鄧小平と習近平の間に大差はないだろう。それは天安門事件前後に鄧小平が見せた民主派に対する強硬姿勢からも、窺い知ることが出来る。

 とはいえ「習近平は鄧小平に還れ」は、東南アジア華人社会が――全体ではないにしても――習近平政権の強硬姿勢に対する危惧の念を抱いていることの証だろう。それというのも、習近平政権が追い求める現在の強硬路線が破綻した場合、華人社会が心情と実利の両面でトバッチリを受けることになるからである。

 どうやら東南アジアア華人社会は、“曖昧な祖国”の将来に危険な兆候を感じ取りはじめたようだ。

  
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