赤坂英一の野球丸

2020年9月9日

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投手陣を下から支える〝縁の下の力持ち〟

 そんな中田が1試合2本塁打で大暴れした試合で、前人未踏の大記録を打ち立てた投手がいる。8月12日、ZOZOマリンスタジアムでのロッテ戦で、今季13ホールド、プロ野球史上最多の通算350ホールドを達成した中継ぎ投手・宮西尚生(35)だ。

 中田を打線の牽引車とするなら、この宮西はさしずめ、投手陣を下から支える〝縁の下の力持ち〟というところか。

 中田とはドラフト同期生で、07年秋の大学・社会人ドラフト3位指名を受け、関西学院大から日本ハムに入団した。プロ1年目の08年から開幕一軍入りを果たして以来、すべてリリーフで13年連続50試合以上に登板している。

 チーム事情で抑えに回されたケースはあるが、ほとんど中継ぎ一筋。先発が一度もない半面、故障や不調で長期離脱したシーズンもまた一度もない。

 13年間で最多ホールドを記録し、最優秀中継ぎ投手賞のタイトルを獲得したシーズンが3度。チームが5位に終わった昨季も試合を壊さないように投げ続け、自己最多の43ホールドをマークしている。まさに鉄腕、かつ鉄のメンタルの持ち主と言っていい。

 それでも、「リリーフは裏方。主役は先発投手か野手でいい」が宮西のモットー。球界最高の実績を、決して自ら誇ろうとしない。

 この宮西もまた、ベンチ裏では常にチームメートへの気配りを欠かさない。ロッカーやブルペンの空気が澱んでいると、自ら冗談を飛ばして和やかに話せる雰囲気を作る。後輩の投手が打たれて落ち込んでいたり、一軍に昇格した若手がストレスを抱えていたりすると、食事に誘って彼らの悩みを聞く。

 以前、宮西に話を聞いて感心させられたのは、「投手だけでなく野手にもふだんから声をかけて、ときには食事にも行くようにしている」ことだ。

 「野球チームは、投手は投手、野手は野手で分かれて固まることが多いんですが、それはよくないと僕は思う。そういうチームでは、例えば投手が四球を出すと、後ろで守る野手が『なんで歩かすねん』と思ったり、野手がチャンスで凡退すると、投手が『なんで打たへんねん』と思ったりするやないですか。

 そういうチーム状態では、勝負をする上で最初から不利になってしまう。だから、普段から投手と野手がコミュニケーションを取ることが必要なんです。そうやって、お互いの性格がわかれば、投手は『いつも点を取ってくれる野手のためにゼロで抑えよう』とか、野手は『いつも抑えてくれている投手のために点を取ってやろう』と、自然と考えられるようになるものだから」

 そうした投手と野手がコミュニケーションを取ることの大切さは、「稲葉さんや金子(誠、現日本ハム野手総合コーチ)さんがまだ現役だったころに教わりました」と、宮西は話していた。彼もまた中田と同様、稲葉や金子のレガシーを受け継いだ選手のひとりなのだ。

 07年ドラフト同期生コンビ、中田と宮西がどうチームを建て直していくのか。そういう視点から見れば、今季の日本ハムはまだまだ面白い。

〈参考資料〉

○日刊スポーツ:nikkansports.com『日本ハム中田が怒り爆発、ベンチでバット振り上げる』8月30日配信

○Sports Graphic Number PLUS『FIGHTERS’ IDENTITY 北海道日本ハムファイターズ 11年目の未来設計図』2014年4月1日発行/文藝春秋

○赤坂英一著『プロ野球二軍監督 男たちの誇り』Kindle版/講談社

  
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