ニンジン、レンコン、コンニャクなどの具材は大きめにカットされているが、これには理由がある。「すみちゃんカレー」の導入と同じ昨年夏から、ライオンの社食では「噛ミング30メニュー」を始めた。「噛ミング30(カミングサンマル)」は厚生労働省の検討会が提唱する取り組みで、健康な生活を目指すという観点から、ひとくち30回以上噛むことを目標とし、「食育推進宣言」をサポートするツールの一つである。
オーラルケア商品の開発に取り組むライオンとも関わりの深いこの取り組み。社員の健康と意識向上の観点から、社食メニューに取り入れることを決めた。
白米よりも噛み応えのある日替わりの健康米(五穀米・黒米・赤飯など)を用意したほか、毎週水曜日を「噛ミング30」の日に。「すみちゃんカレー」も、「噛ミング30」デーに登場するメニューのひとつだ。
ご飯と一緒に口の中に流し込むように食べてしまうことのあるカレーも、具材を大きくカットすることでよく噛むことを促している。ライオンの社食サービスを請け負うエームサービス関東(株)の支配人、後藤亙さんによると、「野菜は煮込むとどうしても崩れてしまうが、事前に素揚げすることで防ぐ工夫もしている。野菜が柔らかくなる一歩手前で止めるようにしている。また、定番具材のジャガイモは、どうしても煮崩れしてしまうため入れていない」という。
社員の認知、意識も徐々に向上
「噛ミング30」メニューが始まって約1年。これまで毎週水曜日に提供されてきたメニューは、「噛ミング豚しゃぶ」「鯖と野菜のさっぱり胡麻揚げ」「ホキの野菜マリネ」など。「すみちゃんカレー」以外は同じメニューを出すことなく、季節ごとの野菜を取り入れながら、その月ごとに考案している。「噛むことを意識してもらうだけではなく、社食として飽きのこないメニューにすることも必要。毎月、管理栄養士や調理師が知恵を絞っています」(後藤さん)。ヘルシーメニューでは女性に比べて男性の満足度が低かったという反省を活かし、健康的でありながらも満足感のあるメニュー考案を心がけている。また、よく噛むことの効果についての情報ポスターやメニュー表記の方法などは財団の歯科衛生士と連携し実施している。
食堂で食事していた社員に話を聞いた。快適生活研究所長の伊野波美恵子さんは、「具材が大きいので、よく噛みますね。小鉢のメニューにも『噛ミング30』の印がついているものがあるので、できるだけそれを選ぶようにしています」と話す。伊野波さんが選んでいた小鉢は「大根ときゅうりの和え物」だった。「古代米が好きなので、健康米の取り組みはとっても良いなと思っています」と笑顔。
経営企画部の新井将英さんは、「食堂に向かうエレベーター待ちのときに同僚と『今日は何にしよう?』なんて話しますね」という。