2024年11月22日(金)

海野素央の Democracy, Unity And Human Rights

2020年10月7日

ハリスに流れる血

 トランプ・バイデン両氏は1回目のテレビ討論会で、白人至上主義を巡って激しい議論を交わしました。トランプ大統領は都市で発生している暴動に関与しているとみられている白人至上主義の極右団体「プライド・ボーイズ」に議論が及ぶと、彼らに向かって「下がって待機せよ」と呼び掛けました。「いつでも攻撃できる準備をしていろ」と、トランプ氏が指示を出したと解釈できます。実際、「プライド・ボーイズ」のメンバーはこの発言を歓迎しました。

 「プライド・ボーイズ」は2016年に極右の活動家によって設立された男性のみの団体で、反移民を掲げており、「アンティファ(反ファシスト)」のような左派の団体を敵視しています。

 ハリス氏のジャマイカ出身の父親は経済学者で、インド出身の母親はガンの研究者です。2人の専門は異なるのですが、彼らは公民権運動の活動家で、人種差別撤廃を求める運動を通じて知り合ったと報じられています。ハリス氏には両親から受け継いだ「自由」と「平等」の血が脈々と流れています。

 昨年6月に開催された民主党大統領候補テレビ討論会で、ハリス氏は人種差別問題を巡る議論で、バイデン氏を論破しました。今回の討論会において、ハリス氏はトランプ大統領の白人至上主義者を擁護する姿勢を、ペンス副大統領に問いただすことは間違いありません。人種差別問題でも、ハリス氏は有利な戦いを見せるでしょう。

ハリスの弱み

 ただ、ハリス氏には弱みがあります。テーマが外交・安全保障に移ったとき、ハリス氏がどう対応するかが注目点です。ペンス氏はイスラエルとアラブ首長国連邦(UAE)及びバーレーンとの「和平合意」、米大使館のイスラエルのエルサレム移転、イスラム国(IS)のバグダディ容疑者殺害、イランのソレイマニ司令官殺害及び金正恩朝鮮労働党委員長との信頼関係構築などを、トランプ大統領の外交成果としてリストしてくるでしょう。

 これに対して、ハリス氏はトランプ外交の成果に疑問を投げかけていく必要があります。例えば、「米朝首脳会談は失敗だった。金正恩は核を保有している」と反論するかもしれません。ただ外交・安全保障問題では、経験のあるペンス副大統領に対してハリス氏は未知数です。同氏はこのテーマで、守勢に回る可能性があります。

討論会の意味

 一般に、副大統領候補同士のテレビ討論会は選挙結果に影響を与えないと言われていますが、今回の討論会は例外になるかもしれません。というのは、バイデン氏が高齢であるために、有権者はハリス氏を次期大統領候補の「本命」としてみているからです。

 仮にハリス氏のパフォーマンスが低いと、彼らは大統領としての資質がないと判断するでしょう。バイデン・ハリス両氏は一体化しているので、バイデン氏にマイナスの影響を与えることは避けられません。逆に、ハリス氏が現職の副大統領を相手に最高のパフォーマンスをみせれば、同氏は本物の次世代リーダーとしてみられることになります。

  
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