海野素央の Love Trumps Hate

2020年10月7日

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海野素央 (うんの・もとお)

明治大学教授 心理学博士

明治大学政治経済学部教授。心理学博士。アメリカン大学(ワシントンDC)異文化マネジメント客員研究員(08年~10年、12年~13年)。専門は異文化間コミュニケーション論、異文化マネジメント論。08年と12年米大統領選挙で研究の一環として日本人で初めてオバマ陣営にボランティアの草の根運動員として参加。激戦州南部バージニア州などで4200軒の戸別訪問を実施。10年、14年及び18年中間選挙において米下院外交委員会に所属するコノリー議員の選挙運動に加わる。16年米大統領選挙ではクリントン陣営に入る。中西部オハイオ州、ミシガン州並びに東部ペンシルべニア州など11州で3300軒の戸別訪問を行う。20年民主党大統領候補指名争いではバイデン・サンダース両陣営で戸別訪問を実施。南部サウスカロライナ州などで黒人の多い地域を回る。著書に「オバマ再選の内幕」(同友館)など多数。

 今回のテーマは、「ペンス対ハリス 米副大統領候補テレビ討論会の行方」です。共和党副大統領候補のマイク・ペンス副大統領と、民主党副大統領候補のカマラ・ハリス上院議員(西部カリフォルニア州)によるテレビ討論会は10月7日(現地時間)に開催されます。司会者はUSAトゥデイ紙のベテラン記者スーザン・ページ氏です。

(REUTERS/AFLO)

 討論会ではペンス・ハリス両候補は、9つのテーマを各10分で討論します。まずページ氏が1つのテーマに対して質問をした後、各候補が2分間で回答し、残り6分で討論を行います。本稿では、副大統領候補のテレビ討論会の行方について述べます。

トランプ退院の影響

 新型コロナウイルスに感染したトランプ大統領は、入院から僅か3日間で退院しました。トランプ氏は早速、自身のツイッターに投稿して、自分を「中国ウイルスに勝った英雄」と呼び、選挙運動再開に強い意欲を示しました。

 ハリス氏はトランプ退院で、テレビ討論会における戦略を変えてくるでしょう。討論の相手はもちろんペンス氏ですが、トランプ大統領を標的にした戦略を当初、とっていたはずです。

 ところがトランプ入院により、トランプ氏に対する個人攻撃を極力回避して、新型コロナウイルスに対するホワイトハウスの危機管理能力に焦点を当てる戦略に変更したフシがあります。ハリス氏はトランプ氏がコロナに感染をすると、即座に自身のツイッターに早期回復を祈る投稿をしたからです。

 今回の突然のトランプ退院で、ハリス氏は再びトランプ大統領の新型コロナウイルスに対する認識の低さ及び、無責任な行動に比重を置く戦略に戻した可能性が高まりました。その中で、クラスター(集団感染)が発生していると見られるホワイトハウスの危機管理能力に焦点を当てて、「ホワイトハウスを管理できない大統領が、どうして国家の危機管理ができるのでしょうか」と議論するでしょう。

 トランプ大統領は退院直後に、ビデオメッセージを通じて、米国民に向けて「ウイルスを恐れるな」と主張しました。ハリス氏は討論会で「ウイルスは危険だ」と述べて、マスク着用の義務化を訴えるでしょう。「マスク着用はあなたの命を守る。同時に、父親、母親、息子、娘、隣人や職場の同僚を守る」と強調してして、ジョー・バイデン前副大統領と同じメッセージを発信します。

 そのうえで、「マスク着用は個人の自由ではなく責任である」と議論して、「もっと真剣に新型コロナウイルスのリスクについて考えよう」と、有権者に呼びかけるかもしれません。

 この議論はマスク着用に否定的な立場をとるトランプ氏の感染により、説得力を増すことは確かです。

 まずトランプ政権が2015年にオバマ政権が国家安全保障会議(NSC)に設置したパンデミック(世界的大流行)を監視するチームを解散させた点を突いてくるでしょう(『テレビ討論会 百戦錬磨のトランプにバイデンは勝てるのか?』参照)。

 次に、ハリス氏はホワイトハウスで発生したクラスターの問題を取りあげます。ホワイトハウスで9月26日に行われた最高裁判事指名発表式に参加したメラニア夫人、ケイリー・マクナニー報道官、マイク・リー上院議員(共和党・西部ユタ州)、トム・ティリス上院議員(共和党・南部ノースカロライナ州)、ケリーアン・コンウェイ前大統領上級顧問、クリス・クリスティ前ニュージャージー州知事、ジョン・ジェンキンス学長及び記者が感染しました。ハリス氏はペンス氏にこの問題について説明責任を強く求めるでしょう。

 バイデン陣営にとってホワイトハウスでのクラスター発生は、トランプ大統領の新型コロナに対する危機管理の甘さをあぶり出すのに最高のケースとなりました。

大規模集会VS.小規模集会

 ハリス氏は討論会で、バイデン陣営はマスク着用とソーシャルディスタンスを義務づけ、新型コロナウイルスに対応した小規模集会を開催してきた点に言及し、トランプ陣営の「密」を作る大規模集会と対比するでしょう。

 さらに、米疾病対策センター(CDC)のロバート・レッドフィールド所長が米議会での公聴会で、マスク着用の重要性について証言した点を挙げて、有権者にトランプ大統領のコロナ対策の失敗を印象づける戦略に出る可能性が極めて高いです。

 筆者がコロンビア大学で教鞭をとっている東部コネチカット州在住の60代白人女性にインタビューをすると、「トランプ大統領は自身の誤った政策の犠牲者になった」と、厳しい評価を下していました。トランプ氏に対する同情はまったくありませんでした。

 コロナ対応については間違いなくハリス氏に軍配が上がります。

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