2024年12月23日(月)

海野素央の Democracy, Unity And Human Rights

2020年9月28日

 今回のテーマは、「米大統領候補テレビ討論会の勝敗を決める2つの要素」です。9月29日(現地時間、以下同)から10月22日まで3回にわたり共和党大統領候補ドナルド・トランプ大統領と、民主党大統領候補ジョー・バイデン前副大統領候補によるテレビ討論会が開催されます。

 各討論会は90分間で行われます。1回目の討論会の議題は、「トランプ大統領とバイデン前副大統領の実績」「連邦最高裁判事指名」「新型コロナウイルス」「人種差別に対する抗議運動と都市における暴動」「大統領選挙における公平さ」及び「経済」の6つです。それぞれに15分割り当てられています。トランプ・バイデン両候補は、司会者の質問に2分間で回答した後に討論に入ります。

 テレビ討論会では言葉の応酬に加えて、トランプ・バイデン両候補の動作、ジェスチャー及び空間の使い方にも注目です。

 そこで本稿では、討論会における両候補の「言語コミュニケーション」と「非言語コミュニケーション」の2つの要素に焦点を当てて述べます。

(360 Production/gettyimages)

言葉の応酬

 トランプ大統領は「中国カード」を切って、「バイデンが勝つと中国が勝つ」と語気を強め、バイデン氏を攻撃するでしょう。テレビ討論会では激戦州の名前を議論の中に入れると、その州の有権者にアピールできます。

 例えば、トランプ大統領は「この選挙は『ペンシルべニア州対中国』だ」「この選挙は『ミシガン州対中国』だ」などと述べて、激戦州における雇用が同国に奪われるというメッセージを発信して、警戒心を高めることが可能です。

 そのうえで、「我々が勝つとペンシルべニア州が勝つ」「我々が勝つとミシガン州が勝つ」と主張して、集中砲火をバイデン氏に浴びせます。

 これに対してバイデン前副大統領は「バイ・アメリカン法」により、製造業を復活させ、労働者の雇用を500万人増やすと反論するでしょう。「メイド・イン・チャイナ」ではなく、「メイド・イン・アメリカ」を強調して、中国に対して厳しい姿勢をみせて「争点潰し」を行います(『テレビ討論会、百選錬磨のトランプにバイデンは勝てるのか?』参照)。

 透かさず、トランプ氏は「バイデンは私のスローガン(メイド・イン・アメリカ)を使っている。彼のアジェンダは『メイド・イン・チャイナ』だ」と言い返すでしょう。激しい言葉の応酬が予想されます。

次男ハンターの疑惑

 トランプ大統領はテレビ討論会でバイデン一族も容赦なく攻撃する公算が高いです。言うまでもなく、標的はバイデン氏の次男ハンター氏です。

 ビジネスマンのハンター氏がウクライナから3億ドル(約317億円)、中国から15億ドル(約1583億円)及びロシアから350万ドル(約3億6900万円)の不正献金を受けたと、トランプ大統領は追及します。これらの主張には根拠がなく、一部の米メディアはトランプ氏が挙げる献金額は誇張だと報道しました。

 加えて、トランプ氏はオバマ前政権が2016年米大統領選挙でトランプ陣営に対してスパイ活動を行ったと訴えて、攻撃を畳みかけてくるでしょう。オバマ前政権及びバイデン一族が腐敗していたといいたいのです。

 バイデン前副大統領はオバマ前政権によるスパイ活動に関しては「真実ではない」と一蹴するでしょう。ただバイデン氏にとって厄介な問題は、ハンター氏が父親の影響力を利用して不正献金を受けたという疑惑です。バイデン陣営はこれまでハンター氏個人の問題だとして、同陣営と切り離してきました。

 最初の妻、娘と長男を亡くしたバイデン氏は、人一倍家族を守る気持ちが強い父親です。トランプ大統領からハンター氏の疑惑に関して猛攻撃を受けたとき、バイデン氏は人間味溢れる父親像を描ければ、有権者を引き付けるかもしれません。しかし、逆に理性を失うとマイナス要因になります。このあたりでドラマが起きるかもしれません。


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