「批判とは、非難や否定ではない」
日本で「全否定」された精神外科の歴史を仔細に振り返り、検証することで、「全否定」されそうな原子力発電の技術をはじめ、さまざまな「科学」と「社会」との関係性を熟慮するヒントが得られると思う。
<科学とは関係ないところに倫理を求めようとし、自分も変わらなければならないという強い緊張感を持つことなく、まさに外野から、ああしてはいけない、こうしてはいけないと研究者に注文を付けるだけで自己満足してきたのが、これまでの生命倫理ではないか。こうしたことを続ける限り、倫理にも科学にも良い未来はないと思う。>
橳島さんは、みずからの専門である生命倫理を、このように厳しく断じる。
<科学研究が適正に行なわれる条件は、徹底した相互批判が保証されていることである。……(中略)批判とは、非難や否定ではない。本来の目標に正しく照準したレベルの高い研究と成果を求め、叱咤激励することである。それこそ、科学とその応用の適正な発展を支えるパトロンとしての市民の、理想の姿である。>
脳科学に興味のある読者にはもちろん、科学と社会のよりよい関係を模索するすべての読者に、手に取っていただきたい。
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