2024年4月19日(金)

WEDGE REPORT

2020年10月20日

── 6G実用化をめぐる覇権争いが始まっている。米国内での6Gの開発状況や中国の6G開発・研究に対抗する米国の計画や戦略とは?

 テクノロジーの進化は続いていく。6Gは、IoTの新たな活用領域の変革を起こし、ほぼ瞬時に大容量通信を処理することによって、ネットワークエッジ(通信ネットワークの末端領域)を再定義する。米国と同志国は、近い将来、産業ネットワークにおけるこのような通信と人工知能(AI)の融合に関して、取り組みを主導していくだろう。サイバーの世界が、遠隔医療から自律化にいたるまで、物理的な世界に埋め込まれていることから、保全が引き続き最重要課題となるだろう。

 現在、6Gの規格については国際的な標準化団体で立ち上げられているところであり、産業用IoT、輸送分野向けIoT、さらには家庭用IoTを含む、IoT分野などで、目を見張るような新たな応用を可能にするだろう。米国は、日本をはじめとした同志国との、6Gに関する研究・開発協力の強化を期待している。それを通じて確実に、共通の民主主義の価値観と基準に沿って、これらのエンジニアリング標準規格が策定・実行され、また相互の国家安全保障を確保される。

 その一方で、我々皆が経済的機会から利益を得られるようにしたいと考えている。5G及び6Gに関して、中国は、国際的な標準化団体において、非常に強硬的に活動を拡大しており、中国企業が占有するアルゴリズムや特許に有利な形での標準化を採択させようとしている。米国は、日本政府、そして日本の優れたエンジニア企業と協力し、6Gに関して標準化団体を操ろうとする中国の取り組みに対抗せねばならない。

── 英国とフランスは、ファーウェイ製品の排除を決めた。その一方、多くの日本企業、特に製造業では、中国の市場と機器・部品に頼るところが大きい。日本政府と日本企業に対して、期待することは何か?

 日本政府は、自国の電気通信ネットワークにおいて、ファーウェイやZTEのような信用できない事業者の製品を使用することのリスクを十分承知している。加えて(中国を排除した)「5Gクリーン・ネットワーク」を維持するため、電気通信事業者の選択にあたり、多くの欧州諸国よりも慎重な姿勢を示した。その結果、日本の携帯電話事業者大手4社─NTTドコモ、楽天、ソフトバンク、KDDI─は、自社事業ではファーウェイ及びZTEの製品を使わないと断言できた。

 米国政府は、同志国とともに、企業のサプライチェーンが中国に過剰集中していることに起因する、国家安全保障上の脆弱性を低減するための措置をとっている。たとえば、世界最大の半導体製造工場である台湾のTSMCに中国ではなく米国内に次の最新製造施設を建設するよう説得することに貢献した。日本の多国籍企業が生産ネットワークを中国以外へ展開させられるよう、日本政府は2450億円のファンドを立ち上げた。経済産業省は何年にもわたり、中国への生産拠点集中によるリスクを低減するための取り組みを行っている。

 優れた日本企業には、中国以外の投資先として米国を加えることを勧めたい。そうすれば米国で、日本の重要な知的財産を守ることができる。


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