2024年4月24日(水)

WEDGE REPORT

2020年10月20日

── 中国は、米国に依存しない独自のサプライチェーンを構築しようとしているが、こうした動きは米国の技術開発にとって脅威となるか。

 中国は何年もの間、米国及び日本のテクノロジーからの自立を試みている。この取り組みのための中国の原則は、相互的でない共生関係で、次の要素 ── 一方的なジョイント・ベンチャー、知的財産の盗用、買収、サイバー・ハッキング、強制的なテクノロジー移転、財政面での誘惑、欺瞞、そして中国の目的に適う場合に限り順守する合意 ── を統合した戦略から成る。

 米国は、国際的なイノベーションを主導している。調査・研究に最も投資し、最も多くのベンチャー・キャピタルを惹きつけ、最も多くの上級学位(修士号以上)を授与し、そしてハイテク製造分野で最大の製造国となっている。米国は世界中の同盟国・パートナー国と緊密に連携・協力することにより、競争力を維持し、最先端を担う地位を維持する。また、同盟国・パートナー国と共に、米国のテクノロジーに対する中国関連のリスクを低減する措置をとっている。

 米国政府は、多くの同盟国・パートナー国とともに、サプライチェーンの中国への過剰集中がもたらす国家安全保障上の脆弱性を低減するための措置をとっている。中国国内のいくつかの組織に対し、米国が課している制裁は、ルールに基づく国際秩序、また何より米国の国家安全保障と外交政策における利益に関して、越えてはならない一線を越える行動に基づくものだ。

── 中国は、「デジタル・シルクロード」戦略及び「中国標準2035」を導入することで、テクノロジーと標準化に対する支配力を強めている。

 標準化を支配しようとする中国に立ち向かう方法は、信用の原則の基礎をなす、包括的な一連のデジタルトラスト基準を強く求めることだ。これには、透明性、互恵性、法の支配、知的財産、人権、国家主権の尊重が含まれる。そのため、米国は志をともにする民主主義国と協力し、データ・プライバシー、保全、人権、信頼できる連携に対する長期的脅威に対処するための、包括的なアプローチである「5Gクリーン・ネットワーク」を開発した。米国の「5Gクリーン・パス」イニシアティブでは、5Gインフラの設計・構築・実行のための「EU 5Gツールボックス」の開発における、欧州連合(EU)加盟国の業績を歓迎している。

 日本とその他の同志国、および民間企業が、(コンピューターや通信の)標準化団体との関わりにおいて、米国政府と協力することが重要だ。たとえば、米国と、カナダ、オランダ、スウェーデン、英国といったパートナー国は協力して、20年2月に開催された、国連専門機関である国際電気通信連合(ITU)の電気通信産業の会合で、中国による新技術「New IP」の提案が通るのを阻止した。

 「5Gクリーン・ネットワーク」は、国際的に受け入れられたデジタルトラスト基準に根差すものであり、複数年にわたる持続的戦略の実行の象徴で、信頼できるパートナーとの連携の上に成立している。さらに追加的な「クリーン・イニシアティブ」を組み込んで、携帯端末、アプリ、クラウド型システム、海底ケーブルを守ることで、システム全体を網羅している。

 これが火付け役となり、5Gネットワークの利用にあたり、各国や企業が次々と「クリーンな」事業者を選んでいった。より多くの国や企業がクリーンな事業者を利用して、5Gネットワークを構築するのにともない、5Gの波はクリーンで信頼できる事業者へと向かっている。ファーウェイが中国共産党の監視国家の一翼を担い、また人権侵害のツールとなっていることに皆が気づき始め、同社との契約は減少している。

 中国政府は自国の計画を推し進めるため、多国間での協議の場、特に国際連合とITUへの注目を高めている。同時に、中国は「一帯一路」と連携させた「デジタル・シルクロード」戦略を拠り所とし、中国のICT関連機器とサービスの販売をより多くの国で進めようとしている。   


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