Washington Files

2020年11月16日

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斎藤 彰 (さいとう・あきら)

ジャーナリスト、元読売新聞アメリカ総局長

1966年早稲田大学卒業。68年米カリフォルニア州立大学バークレー校大学院修士課程修了、70年読売新聞入社。ワシントン常駐特派員を2度務めた後、アメリカ総局長、東京本社取締役調査研究本部長などを歴任。近著に『中国VSアメリカ』『アメリカはカムバックする!』(いずれもウェッジ)がある。

『議会恩赦congressional pardon』

 「もう一つの合法的シナリオもあり得る。それは、ペンス氏の出方に不安が残ることや、州レベルの刑事訴追は連邦政府の恩赦の対象外となることを考え、『議会恩赦congressional pardon』を模索することだ。

 もし、トランプ氏が最後にこの道を選ぶとすれば、まず、ナンシー・ペロシ下院議長(民主党)に頭を下げ、連邦および州レベルの犯罪行為一切について罪の許しを乞う『議会恩赦』特別法案の上程を請願する。もちろん、このアイデアは不可能ではないが、実現の見込みはあまりない。そこで、ペンス副大統領がペロシ下院議長さらにアンドリュー・クオモ・ニューヨーク州知事のところに直接出向き、これ以上トランプ氏がバイデン政権1期を通じ国内混乱・分断をあおる事態を回避するため、恩赦が不可欠であることを説得することになる。ただその場合、トランプ氏は大統領として犯したすべての罪を認めることが前提だ」

 いずれにしても、トランプ氏自身が当初から主張してきたような「自己恩赦」の可能性については、多くの専門家が否定的見方に傾いている。

 クリントン政権下で司法次官補を務めたハリー・リットマン・カリフォルニア大学法学部教授は9日付けロサンゼルス・タイムズ紙寄稿コラムで、恩赦を規定した憲法第2条について「自分自身を赦すことは初めから前提としていない」として次のように述べている:

 「そもそも自己恩赦という考えは、『いかなる人も自分の行為についての判事となりえない』というアングロアメリカンの崇高な法律と矛盾するものであり、もしそれが認められれば、大統領を法の上位に置くことになる。そしてそれは、憲法を起草した建国の父たちの意向に背くことを意味し、さらには、大統領は連邦法の忠実な履行を期すために憲法上の責任を果たすべきだという基本理念を棄損させる。大統領が自分で勝手に自分の罪を赦すことは、法の忠実な履行義務に違反することになる」

 トランプ大統領はこれまで、刑事訴追の対象となり得る数々の事案を抱えながら、司法長官以下の側近による捜査介入で追及を逃れてきた。しかし、明白なのは、1月20日退任後はその後ろ盾を失い、丸裸にされかねないことだ。

 ニューヨーク・タイムズ紙の報道によると、トランプ氏は就任当初から、連邦およびニューヨーク州検察による捜査状況を気にし、側近たちにも「2020年選挙で必ず勝利する必要がある。さもなければ危ない立場に追い込まれる」と不安げに漏らしていたという。

 また、CNNは、「元ホワイトハウス高官」の話として、トランプ氏はいずれ罪に問われることを承知の上で、「自己恩赦」のみか、自分の息子2人、娘のイバンカ氏など家族ぐるみの恩赦の意向についてもたびたび言及していたと伝えた。

 そのトランプ氏は、今回の大統領選の開票が50州全州で終わり、バイデン氏が最終的に当選に必要な選挙人270人をはるかに上回る306人を獲得して当選が確定した13日現在、いまだに敗北宣言を出すに至っていない。

 しかし、最後に望みを託した各州裁判所での「不正選挙」の訴えも、相次ぐ棄却の憂き目にあい、逆転勝利とは程遠い状況に置かれたままだ。果たして、1月20日大統領就任式まで残された時間がなくなる中、トランプ氏はどのような決断を下すのだろうか―。

  
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