2022年12月10日(土)

ザ・移動革命

2020年11月24日

»著者プロフィール
著者
閉じる

伊藤慎介 (いとう・しんすけ)

株式会社rimOnO 代表取締役社長

1999年に旧通商産業省(経済産業省)に入省し、自動車、IT、エレクトロニクス、航空機などの分野で複数の国家プロジェクトに携わる。2014年に退官し、同年9月に超小型電気自動車のベンチャー企業、株式会社rimOnO(リモノ)を設立。2016年5月に布製ボディの超小型電気自動車”rimOnO Prototype 01”を発表。現在は、CASEやMaaSなどモビリティ分野のイノベーション活動に従事。KPMGモビリティ研究所アドバイザー、東京電力ホールディングス株式会EV戦略特任顧問などを兼務。

戦闘機など防衛機の開発・量産への影響はどうなるか?

 まず想定されるのが防衛機への影響だ。防衛省は戦闘機F2の後継機は日本主導で開発すべく計画を進めている。しかし、年々装備が高度化していて膨大な開発費が必要となる戦闘機を全て日本単独で進めることは現実的ではない。先行する欧米であっても同盟国と開発や量産を分担し合う国際共同開発が一般的になっていることから、F2後継機でも国際共同開発を盛り込まざるを得ないだろう。

次期戦闘機のイメージ(防衛省ホームページより)  

 しかも防衛省が開発を進めようとしている次期戦闘機は、航空機単体としての機能を向上させるだけでなく、他の戦闘機や戦艦など連携する“ネットワークとして”の機能を持つことが求められている。このため戦闘機のサプライヤーだけでなく、様々な防衛装備品メーカーとの複雑な交渉や調整を行いながら開発・量産を進める能力が求められる。

 民間航空機において巨大サプライヤーをコントロールし、開発・量産へと進めることができなかった三菱重工業が次期戦闘機のプロジェクトを担える実力があるのかという心配はつきまとう。しかも、次期戦闘機のプロジェクトで失敗してしまうと、巨額の税金を無駄にしてしまうだけでなく、国防に重大な影響を与えかねない。

 次に想定されるのが国土交通省航空局への影響だ。50年間民間旅客機の開発・量産を行ってこなかった日本では、国内において民間旅客機についての型式証明の取得申請がほとんどなく、航空局としても航空機の耐空性について高い審査能力を必要としない状態が続いていた。

 しかし、三菱重工業がMRJ/スペースジェットの開発・量産を決定し、国内において型式証明の取得申請を行うことになったことから、国土交通省航空局では審査能力の大幅な拡充を図ることとなった。日本において型式証明を取得した航空機がアメリカでも飛行することができるBASAという相互認証制度が設けられているのでスペースジェットはアメリカの型式証明を取得しなくても良いのだが、それによって日本の航空局の審査能力がアメリカの航空局に問われることとなる。そのため、国土交通省では航空機検査官を大幅に増員するなどの対応を行ってきた。

 今回、スペースジェットが型式証明の取得のみを残し、量産計画を凍結することになったことは、日本製の航空機が世界の空を飛ばないことを意味しており、国土交通省として拡充した審査能力を維持する必要がなくなることを示唆している。

 その結果、審査能力が元通りに近い状態になってしまうと国内で今後新たに民間旅客機を開発することはほぼ不可能になってしまいかねない。

新着記事

»もっと見る