ザ・移動革命

2020年10月6日

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伊藤慎介 (いとう・しんすけ)

株式会社rimOnO 代表取締役社長

1999年に旧通商産業省(経済産業省)に入省し、自動車、IT、エレクトロニクス、航空機などの分野で複数の国家プロジェクトに携わる。2014年に退官し、同年9月に超小型電気自動車のベンチャー企業、株式会社rimOnO(リモノ)を設立。2016年5月に布製ボディの超小型電気自動車”rimOnO Prototype 01”を発表。現在は、CASEやMaaSなどモビリティ分野のイノベーション活動に従事。KPMGモビリティ研究所アドバイザー、東京電力ホールディングス株式会EV戦略特任顧問などを兼務。

自動車産業の街デトロイト(alexeys/gettyimages)

 8月13日、米国ミシガン州政府は、デトロイトからアナーバーの間に全長40マイル(約64km)に及ぶ米国初の自動走行レーンを建設すると発表した。

 今回の計画が注目に値するのは、プロジェクトリーダーを務めるのがデトロイトを本拠地とするビッグ3(GM、フォード、フィアット・クライスラー)ではなく、グーグル系「Cavnue」だということだ。同社はフォード、ミシガン大学と連携する形で今後2年間にわたって実現可能性分析を行い、その後自動走行レーンの試験的導入、完全導入へと進んでいく計画だという。

Cavnueプロジェクトの完成イメージ(出典:Cavnue社サイトより)

 このCavnue、実は本プロジェクトのためにSidewalk Labsの関連会社として設立された新会社である。Sidewalk Labsといえば昨年6月にカナダ・トロントにおける1500ページにも及ぶ壮大なスマートシティ構想を発表し世界を震撼させたことで有名だ。モビリティやITだけでなく、環境にやさしく高い強度を誇る次世代型木造高層建築、OMO時代を意識した新しい商業施設、完全自動運転時代を見据えた新しい道路空間設計、直流送電を張り巡らしたエネルギーシステムなど、現在の街にはない斬新な構想を次々と打ち出したからである。

 そのSidewalk Labsであるが、プライバシーの侵害につながるとの懸念の声などもあり、表向きには新型コロナウィルスによる経済への影響などを理由に今年の5月7日にトロントのスマートシティプロジェクトからの完全撤退を発表している。撤退時に同社は壮大なスマートシティ構想をテーマごとに切り分けて個別に進めていくと表明していたが、その一つとなったのがミシガン州での自動走行レーンプロジェクトなのである。

 Cavnueのホームページでは、自動走行レーンを建設する理由として、

  • 自動運転技術の進化は目覚ましいが、一方でLevel5相当の完全自動運転の実現は当分先になるとの見通し
  • クルマの自動運転についての技術には相当な金額の投資が行われてきたが、それを支えるインフラへの投資は限られてきた

 ことが述べられている。

 そもそもグーグルというと、インフラに依存しない“自立型”の自動走行の実現を目指してきたことで有名だ。2000万マイル(約3200万km)以上の公道走行を続けながら開発してきた技術、2016年に設立された自動運転専門会社「Waymo」がアリゾナ州で提供している有料の自動走行ライドシェアサービスWaymo Oneのいずれも自立型の自動走行を前提としてきた。そのため、グーグルの関連会社であるCavnueがインフラ協調の必要性を主張したことは驚きであり、自動運転に関するグーグルの哲学が変わりつつあることを示唆している。

最短でも2年先行する中国

 実はCavnueのプロジェクトに先行してインフラ協調に取り組んでいる国がある。自動運転、5Gで世界最先端を目指している中国だ。

 中国では、北京から100km程度の距離にある“雄安新区”を自動運転の特区と指定し、官民を挙げて自動運転の実証実験に取り組んでいる。また、北京と雄安新区の間に“京雄高速”という全長約100kmの高速道路を新たに建設し、その内側2レーンを自動走行専用レーンとする予定にしている。8月31日にBaidu社のホームページに掲載された情報によると、高速道路の建設は今年中に完了し、来年6月には開通するという。また、自動運転技術は京雄高速の建設にも活用されており、無人運転のアスファルトフィニッシャ―3台と、無人運転のローラー6台が活躍しているそうだ。

 ミシガン州の自動走行レーンが建設されるのは2年間の実現可能性分析の後となることから、実際に自動走行レーンを活用して実証実験を始めるのは中国がアメリカより最短でも2年ほど先行することになる。

中国が進める自動走行レーン建設(出典:国土交通省資料より)

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