2024年4月27日(土)

Wedge REPORT

2020年11月30日

スポーツのバラエティ化?

 以下は念のため「個人的な見解」として前置きしておくが――。どのような角度から検証しても、やはり昨年「AIG全英女子オープン」を制するなど日本テレビ側が〝シブコ旋風〟を巻き起こしている人気者・渋野に焦点を当てようと肩入れしていたのはミエミエであり、自分の目には非常に偏った番組構成としか映らなかった。そうした基本姿勢こそが、このお菓子騒動を引き起こしてしまった元凶と考える。他のメディアやJLPGA関係者の間からは異口同音に「最近の日テレは女子ゴルフを含めスポーツ中継をバラエティ番組とどこか履き違えているのではないか」と苦言を呈されていたのも致し方ない。

 思えば日本テレビは最近、プロ野球中継でも不可解な番組進行が目立って批判の対象となっている。21日、巨人対福岡ソフトバンクホークスの日本シリーズ第1戦(京セラドーム)を同局が生中継。2点を追う4回無死一、二塁の絶好機で巨人・丸佳浩外野手が6―4―3の併殺打に倒れ、その際に一塁送球を受けるソフトバンク・中村晃内野手の左足を自身の左足で蹴飛ばした。映像では一部始終の様子がハッキリと映し出され、ネット上でも「丸キック」として物議を醸し出すことになったが、ナゼか中継中の同局アナウンサーは完全スルー。各方面から「どう考えても〝系列球団〟の巨人をかばうための偏向だ」と非難が集中した。

 22日の同シリーズ第2戦(京セラドーム)では同局中継に今季限りで引退した阪神・藤川球児氏がゲスト出演。試合中、巨人・中島宏之内野手が打席に立った際、同局アナウンサーから10日の引退試合(甲子園)で対戦したことを再三尋ねられた藤川氏が「今は僕のことはいいので、こっちに集中したい」と釘を刺したシーンもネット上で話題になった。

 同局の試合中継でも解説者として名を連ねた経験のあるプロ野球OBの1人もつい先日、こう嘆いていた。

 「まったく空気を読めないアナウンサーがせっかくの緊迫した場面をぶち壊しかけていたが、藤川君の一言によって救われました。ただ、これは氷山の一角に過ぎないでしょう。高額な放映権料を支払って数多くのスポーツの試合を放送する権利を得ているにもかかわらず、これだけの失態を繰り返してしまっているのはメディアの権威失墜にもつながってしまう。番組ソフトを提供する側の日本スポーツ界にとっても由々しき事態です。放置しておけば、プロ野球界を含めスポーツ界そのものが軽く見られるようになってしまいかねません」

 振り返れば、このような〝前科〟もあった。2011年12月18日に横浜国際総合競技場で行われた「FIFAクラブワールドカップ」の決勝戦でFWリオネル・メッシ(アルゼンチン)を擁するFCバルセロナ(スペイン)がサントスFC(ブラジル)を下して優勝。この大会を独占放送した日本テレビは決勝戦終了直後、チームメートと狂喜乱舞するメッシを半ば強引に会場内の特設スタジオに連れ込み、コメンテーターの明石家さんまに「老後はどうしはるんですか」と尋ねさせる〝世界的暴挙〟を演出して猛バッシングを浴び、大ひんしゅくを買っていた。果たして、この反省は9年経った今も生かされていないのだろうか。

 スポーツは真剣勝負の世界。軽視されるようなことがあってはならないし、それをメディアが助長する流れを作ってしまうなど言語道断だ。同じ報道する側に携わる1人として肝に銘じたいと思う。

  
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