Wedge REPORT

2020年11月16日

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 これには正直、驚かされた。東北楽天ゴールデンイーグルスの新監督に石井一久GMが就任。日本のプロ野球界では異例の「取締役GM兼監督」として編成から現場の指揮まで全権を担うことになった。

 全権監督と言えば、聞こえはいいだろう。しかし、それだけ自らにのしかかる責任は重い。今オフもGMとして新戦力の補強や所属選手たちとの契約更改などクリアしなければいけない数多くの仕事が山積みとなっている。国内FA権を取得した島内宏明外野手、塩見貴投手ら複数の生え抜き選手たちとの残留交渉の行方も留意しなければならない懸案事項だ。

(Axel_wolf/gettyimages)

 各メディアの報道によれば、新監督就任発表のオンライン会見で立花陽三球団社長は「批判も多いが、新しいスタイルにチャレンジしていきたい」と述べたという。GMの仕事だけでも神経をすり減らしそうなものだが、ただでさえ重責の役職に加えて一軍の指揮官まで両立させようというのだからオファーを出した楽天、そして何より引き受けた石井監督にとって確かに「チャレンジ」と言える。

 しかしながら、石井監督誕生の背景はそんな格好のいい流れではなさそうだ。今季のチームは就任1年目だった三木肇監督のもとで4位に終わり、2年ぶりのBクラスに沈み勝率も5割に届かなかった。一昨年の最下位から正式就任1年目でチームを昨季3位にまで引き上げたはずの平石洋介監督(現ソフトバンク一軍打撃兼野手総合コーチ)との契約を更新せず、代わって二軍監督だった三木監督を一軍指揮官のポストへ内部昇格させる決断を下したのは他ならぬ編成トップ・石井GMである。

 その昨オフに「3位はBクラス」とまで言い切り、ヤクルトスワローズ時代から昵懇の関係にある三木監督を後任に指名したが、ふたを開けてみれば昨季よりもさらに成績を悪化させてしまった。

 4位に沈みながらも当初は複数年契約を結んでいる三木監督の続投を基本線としていたものの、それが一部スポーツ紙に先行報道されるとネット上を中心にファンから怒りを買った。「その裏側では三木監督退任に備え、次期監督候補として石井人脈を駆使した複数の大物候補者もリストアップしていたようだが、どうやら先方全てから色よい返事を得られなかったらしい」との情報もある。

 いずれにしても三木監督の来季続投がファンから猛反発を食らってしまっている以上、もはや指揮官交代は避けられないと判断せざるを得なくなった。だがバトンを託したくても目ぼしい後任は誰もおらず打つ手すらない状況下において、こうなったら石井GM自らが新監督の座を引き継ぐしかない。球団側からオファーを受けた格好となっているが、実際のところでは万策尽きて追い込まれた編成トップの石井GMが〝最後の手段〟として前代未聞と言える兼任監督就任の道を選んだものとみられている。

 ちなみに石井GM兼監督は内外の野球ファンからの受けがあまり芳しくない。やはり生え抜き監督として地元でも非常に人気が高かった昨季当時の平石監督をAクラスに引き上げたにもかかわらずドラスティックな姿勢でクビを切ったことが今も明らかに尾を引いている。

 そしてマネジメント契約を結ぶ吉本興業のツテも使いつつ、かつて自身が現役時に所属したヤクルトや埼玉西武ライオンズを中心に主力選手やOB、コーチングスタッフ経験者を次々と獲得し、現在のチームの礎を築き上げた。そういう豪腕まがいな手法である半面、自らに近しい関係者や選手たちを結果的に数多く呼び寄せた〝お友達編成〟が人一倍に人情味のある東北のファンにはあまり理解を得られておらず、スタンドプレーのように映ってしまっているのが現状だ。巨大補強で方々より人材をかき集めてくるイメージからパ・リーグの他球団ファンにも目くじらを立てられており、どこかヒール的な存在にもなりつつある。

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