2024年11月24日(日)

Wedge REPORT

2012年8月21日

会場建設を請け負ったクロックス・インターナショナルのヴェリエフ副支社長

 会場建設を請け負う大手建設会社クロックス・インターナショナル極東支社のエミーリ・ヴェリエフ副支社長は、「4年前に建設が始まったときには誰もが『間に合わない』と言っていました。水や電気の確保も難しく、資材を船で運び込まないといけないなど条件はけっして良くはありませんでしたが、最盛期には1万8000人の作業員を動員してなんとか間に合わせることができました」と説明する。

 会場の建設工事を監督するためにモスクワの連邦政府からお目付役として派遣されたのが、シュヴァロフ第一副首相のヤロスラフ・ヴォスクレンスキー補佐官だ。そのお目付役も、「各国の代表団にロシアの建築技術の高さをアピールとともに、ここからアジア太平洋に向かう門が開かれることを示す絶好の機会になるでしょう」と工事の出来映えに満足げだ。

モスクワからのお目付け役・ヴォスクレンスキー秘書官

 ウラジオストクやその周辺で進められる開発事業はこれだけではない。他にもウラジオストク空港の新ターミナルや市内と空港を結ぶ鉄道線、5つ星ホテル、オペラ・バレエ劇場、海洋水族館など合わせて50ものプロジェクトが進む。

 なかにはAPEC開催までに間に合わなかった工事も少なくないが、それでも港には建設重機が大量に陸揚げされ、いたるところで道路の建設工事や建物の化粧直しが進む様子は活況を感じさせるに十分だ。

 地元メディアでは、「ウラジオストクは(モスクワ、サンクトペテルブルグに続く)ロシア第三の首都になる」などの表現も使われ、街全体が勢いづいている。

中国式集中投資でインフラ整備

 プーチン大統領がAPECの開催地にウラジオストクを選んだのは、2007年のこと。それにあわせてロシア政府がまとめた極東開発のための国家プログラムが「2013年までの極東・ザバイカル(バイカル湖より東の地域を指す)経済社会発展プログラム」だ。APEC関連の開発プロジェクトはこのなかのサブプログラムとして位置づけられている。

 このプログラムに基づいて12年までの5年間で極東に投下された資金は、公共事業や民間からの投資をあわせて6793億ルーブル。日本円にすると、じつに1兆8000億円あまりにもなる。これによって立ち遅れていた極東のインフラを一挙に整備するのがねらいだ。


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