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2020年12月10日

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 イーロン・マスク氏がスペースX社から起こした低軌道・超小型サテライトによるインターネットプロバイダー、スターリンクが12月7日、米FCC(連邦通信委員会)から8億8700万ドルの基金を受け取ることになった。これはFCCによる米国内の過疎地域への高速通信網設置のための予算、92億ドルの一部で、スターリンクスが最大の対象企業となった。

(Olga Zakharova/gettyimages)

 国土が広い米国ではブロードバンド通信の恩恵を受けられない人が最大で1億6000万人と推計されており、安価で安定したブロードバンドを全国民に、というのが課題だった。また途切れずどの場所でも使える通信は今後の自動運転普及にも欠かせないものだ。

 特に今年、コロナによる在宅勤務の増加や学校閉鎖によるリモート授業が急速に拡大したため、高速通信網の充実は喫緊の課題となった。すでに米国では「サーバー格差」という言葉が生まれており、過疎地域などで高速インターネットが使えず、Zoomによる授業などを受けられない児童の学習の遅れが指摘されている。

 スターリンクスでは今年夏から限定的なベータサービスを提供し始めたが、10月からはさらに拡大、「ベター・ザン・ナッシング・ベータ」というテストプログラムを開始。また11月にはカナダでもサービスを開始している。

 ただし料金は決して安くはない。最初にサテライト・ディッシュなどの機器を499ドルで購入、月々の利用料は99ドルで、現在のところ通信速度は最高で150mbpsだ。例えば米国でコムキャストに加入している場合、200mbpsが月50ドル程度、モデムなどの機器は無償での貸し出しだから、比較すると割高だ。

 それでもスターリンクスに期待が集まるのは、やはり過疎地域で従来の高速インターネットが使えない場所にこれまでになく速いサービスが提供できる、という点だ。こうした地域では10mgps以下のサービスで100ドル近い料金を支払っているケースもある。

 つまり都市部やその周辺ではそれほど需要はないかもしれないが、米国やカナダのような土地が広く通信網がカバーしにくい地域がある国、あるいは通信インフラが充実していない途上国などでは従来よりも安くて速いサービスを提供することが可能となる。

 スペースXではスターリンクスによる売上を早ければ来年には40億ドル、2025年には220億ドルに成長する見込みがある、としており、その営業利益マージンは60%にも上る。しかもスターリンクスは来年中にも上場する可能性も指摘されている。

 一方でこうした衛星による通信網のマイナス面も指摘されている。スターリンクは現時点で900基ほどの超小型衛星を打ち上げているが、全世界でサービスを展開するには1万2000基、最終的には4万2000基の打ち上げを予定している。

 これだけの数の衛星が地上500キロという地点に無数に存在することにより、天文観察にすでに影響が出始めている、という。カナダでは「夜空に光る点が列車のように連なっている」光景が目撃されたり、衛星の光度により星空が以前より見えにくくなったり、という現象も報告されている。

 しかも衛星通信に乗り出しているのはスターリンクだけではなく、アマゾンのジェフ・ベゾズ氏、ヴァージン・グループのリチャード・ブロンソン氏も同様の計画を進行中だ。すべて実現すると夜空は衛星だらけ、ということになる。これら衛星が寿命を迎えた時の宇宙ゴミの増大も今後は深刻な問題になるかも知れない。

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