トランプ人事
トランプ大統領は最初の国務長官に石油大手エクソン・モービルの元CEO(最高経営責任者)レックス・ティラーソン氏を起用しました。米メディアによれば、ジョージ・W・ブッシュ政権で国務長官を務めたコンドリーザ・ライス氏の推薦によると言われています。トランプ・ティラーソン両氏の間には信頼関係が構築されていませんでした。
では、大統領補佐官(国家安全保障問題担当)であったジョン・ボルトン氏の場合はどうだったのでしょうか。保守系FOXニュースの中で、トランプ政権に関して肯定的なコメントをしているボルトン氏を観て気に入り指名したと、トランプ氏は語りました。従って、こちらも両氏の間に人間関係が築かれていませんでした。
トランプ政権の国防長官であったジェームズ・マティス氏のケースもみてみましょう。トランプ氏にとってマティス氏は自分のイメージを強化するのに最も都合の良い人物であった点は看過できません。マティス氏のニックネームが「狂犬」であったからです。
当時トランプ大統領は大規模集会を開き、マティス氏を狂犬と呼んで支持者にアピールしていました。これには明確な意図がありました。
トランプ氏は、獰猛な狂犬のボスは自分であるというメッセージを支持者に送ったのです。その意図は自分を「強いリーダー」に演出することでした。つまり、イメージ強化の道具としてマティス氏を利用した訳です。マティス氏の起用にはマーケティングの要素が含まれていました。
対照的な人事
前述しましたが、バイデン氏が事前に構築された信頼関係及び人間関係に価値を置いていることが人事から明確に読み取れます。バイデン人事のメリットはリスクが低くて、確実性が高く、安定している点です。
一方、トランプ人事は信頼関係に基づいたものではありません。トランプ氏はティラーソン氏、マティス氏及びボルトン氏など、閣僚や高官を次々に解任しました。信頼関係がない人事は、リスク及び不確実性が高く、不安定である言わざるを得ません。
ただし、トランプ人事はエキサイティングで「動的」であった点も事実です。その反面、バイデン人事は、退屈で「静的」であると言えるかもしれません。トランプ大統領とバイデン次期大統領の人事は極めて対照的です。
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