今回のテーマは、「バイデンが背負うトランプの『負の遺産』」です。ドナルド・トランプ米大統領は、好調な経済という「正の遺産」をバラク・オバマ前大統領から引き継ぎました。ところが、次期大統領に確定したジョー・バイデン氏は、トランプ大統領から大きな「負の遺産」を継承します。
では、バイデン次期大統領はどのような「負の遺産」と向き合っていかなければならないのでしょうか。本稿では、バイデン氏が背負うトランプ氏の「負の遺産」を中心に述べます。
立場の逆転
新型コロナウイルスの対応においてバイデン氏は、トランプ大統領の「負の遺産」を受け継ぐことになります。米国では1日の新型コロナウイルス感染者数は、18万人から19万人のレベルに達しました。死者数は25万人を突破するのは確実です。
そこで、バイデン次期大統領は「強固で迅速な連邦政府のコロナ対策が必要だ」と自身のツイッターに投稿しました。危機感を抱いているバイデン氏は早速、コロナ対策チームを立ち上げ、ワクチンの無料接種やマスク着用の義務化などの政策を唱えています。
にもかかわらず、トランプ大統領には新型コロナウイルスの感染拡大を終息させて、バイデン氏にバトンタッチをする意思は弱いとみて間違いないでしょう。トランプ氏は新型コロナウイルスが制御できない状態でバイデン氏に政権移行をすれば、今度は自分が新政権のコロナ対応を痛烈に批判できるチャンスを得るからです。立場が逆転するのです。
ただし、バイデン新政権が新型コロナウイルスを終息できれば、2024年米大統領選挙に向かって高得点を稼ぐことになります。
左派勢力との調整
国内の団結を訴えて大統領選挙に勝利を収めたバイデン氏は、民主党内の統一という難題を抱えています。中西部ミネソタ州ミネアポリスで5月25日、白人警察官が黒人男性のジョージ・フロイドさんを暴行死させました。この事件をきっかけに、民主党左派は警察予算削減を強く訴えています。
それに対して、バイデン氏は選挙期間中、より多くの警察官の雇用を主張し、警察予算削減に反対しました。加えて、石油・天然ガスの採掘手法であるフラッキングに賛成して、民主党内の環境活動家と反対の立場をとりました。
おそらくバイデン氏は、閣僚に民主党左派の大物議員を任命して、党内の中道穏健派と左派の摩擦を緩和する作戦に出るでしょう。そうはいっても、次の4年間で左派勢力はさらなる台風の目になる可能性があり、バイデン氏の調整能力が問われます。