2024年12月23日(月)

海野素央の Democracy, Unity And Human Rights

2020年11月13日

 今回のテーマは、「トランプ最後のディール?」です。選挙人「270」以上を獲得した民主党大統領候補のジョー・バイデン氏は11月7日(現地時間)、地元の東部デラウエア州ウィルミントンで「勝利宣言」を行いました。この宣言から何を読み取ることができるのでしょうか。

 なぜ共和党大統領候補のドナルド・トランプ氏は「敗北宣言」をしないのでしょうか。本稿では、バイデン氏の勝利宣言を分析した後、トランプ氏の思惑について述べます。

アリゾナで抗議するトランプ支持者(REUTERS/AFLO)

バイデンの勝利演説と人事

 バイデン前副大統領が行った勝利宣言から、人事の骨格が見えてきました。

 バイデン氏は「史上最も広範囲で多様な連合軍を作り上げた」と主張しました。そのうえで、連合軍には「民主党員、共和党員、無党派、進歩派、保守派、老人、若者、都市、郊外、農村部、ゲイ、ストレート、トランスジェンダー、白人、ラテン系、アジア系、アメリカ先住民」が含まれているというのです。

 そのうえで、「一番苦戦していたときに、アフリカ系アメリカ人のコミュニティーが私のために立ち上がってくれた」と、演台を右手で強く叩きながら強調しました。

 ということは、閣僚に複数のアフリカ系アメリカ人が入閣するとみて間違いありません。米メディアによれば、国務長官にオバマ前政権の国連大使であったスーザン・ライス氏の名前が挙がっています。ライス氏は現在アメリカン大学(ワシントンDC)の上級研究員で、バイデン氏の副大統領候のリストに名前が挙がっていたと言われています。

 ただ、ライス氏が国務長官に指名された場合、議会上院での承認公聴会が難航する可能性が高いです。というのは、12年リビアのベンガジで発生した米領事館襲撃事件に関して、同氏はアルカイダ系組織による犯行であったのにもかかわらず、「自然発生的」と述べたからです。

 住宅都市開発長官には、南部フロリダ州ジャクソンビルのアルビン・ブラウン元市長、ジョージア州アトランタのケイシャ・ランス・ボトムズ市長及び、カレン・バス下院議員(カリフォルニア州)といったアフリカ系候補が名を連ねています。ボトム・バス両氏は女性で、ライス氏と同様、バイデン氏の副大統領候補でした。

共和党員の入閣?

 バイデン氏は勝利宣言でLGBT(性的少数派)にも言及しました。退役軍人長官にバイデン氏と民主党大統領候補指名争いを戦った同性愛者のピート・ブディジェッジ前インディアナ州サウスベンド市長の名前が挙がっています。

 加えて、バイデン氏が民主党内の左派との団結を図るために、バーニー・サンダース上院議員(東部バーモント州)を労働長官に、エリザベス・ウォーレン上院議員(東部マサチューセッツ州)を財務長官に指名するのに注目です。

 サンダース上院議員は連邦最低賃金の15ドル値上げを訴えています。一方、反ウォール・ストリートのウォーレン上院議員は「GAFA(グーグル・アマゾン・フェイスブック・アップル)解体」を主張しており、仮に財務長官に就任すると株式市場が反応することは必至でしょう。サンダース氏はウォーレン氏を財務長官に推薦しています。

 今回の上院選において共和党が多数派を維持し、バイデン氏がサンダーズ・ウォーレン両氏を指名した場合、承認公聴会は円滑に進まない公算が高いです。

 さて、バラク・オバマ前大統領は共和党員のロバート・ゲーツ氏及びチャック・ヘーゲル氏を国防長官に起用し、レイ・ラフード氏を運輸長官に任命しました。前述しましたが、バイデン氏は連合軍の中に共和党員も入れて勝利宣言をしました。

 8月にオンラインで実施した民主党全国大会で、中西部オハイオ州のジョン・ケーシック前知事及びスーザン・モリナリ元下院議員(東部ニューヨーク州)など、共和党関係者が演説をしています。

 イーベイとヒューレット・パッカードの元CEO(最高経営責任者)で、現在米新興動画サービス「クイビ」のCEOメグ・ウィトマン氏も、同党の全国大会で演説を行いました。ウィトマン氏は08年の共和党大統領候補であった故ジョン・マケイン陣営の共同議長でした。同氏は商務長官の候補に挙がっています。

 バイデン政権では、共和党関係者が入閣をするかもしれません。


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