2024年12月22日(日)

海野素央の Democracy, Unity And Human Rights

2020年10月22日

 今回のテーマは、「トランプ対バイデン 最終回の米大統領候補テレビ討論会の行方」です。共和党大統領候補のドナルド・トランプ大統領と、民主党大統領候補のジョー・バイデン前副大統領による最終回のテレビ討論会が、10月22日(現地時間)に南部テネシー州で開催されます。

トランプ大統領の集会に参加した支援者(AP/AFLO)

 テーマは「新型コロナウイルスとの戦い」「米国の家族」「人種問題」「気候変動」「安全保障」及び「リーダーシップ」の6つです。司会者は米NBCニュースのホワイトハウス担当記者クリステン・ウェルカー氏です。ホワイトハウスでの記者会見でウェルカー氏は、トランプ氏に容赦なく厳しい質問をぶつける記者です。

 本稿では、最終回のテレビ討論会の行方について述べます。

ステピエンの書簡

 トランプ陣営のビル・ステピエン選対本部長は10月19日、共和・民主両党の大統領候補によるテレビ討論会を主催する委員会に書簡を送りました。その中で、ステピエン選対本部長は、上で挙げたテーマは1回目のテレビ討論会においてすでに議論したと述べた上で、「外交問題」が含まれていない点を指摘し、再調整を行うように要求しました。確かに、最終回のテレビ討論会は伝統的に外交がテーマになっています。

 ステピエン氏によれば、トランプ大統領にとってイスラエル、アラブ首長国連邦(UAE)及びバーレーンによる「和平合意」は外交成果であるというのです。同氏はバイデン前副大統領は「ワシントンの政治家として、47年間中国の利益を促進してきた」とも主張しました。

 驚いたとに書簡の中で、ステピエン選対本部長はバイデン氏の次男ハンター氏がウクライナのエネルギー会社と父親の仲介をして利益を得た点にも触れました。まるで委員会と「討論」をしているかのような書簡です。

 さらに、ステピエン氏は委員会が9月29日のテレビ討論会のスケジュールを前倒しにしなかったこと、10月15日の討論会をトランプ陣営に相談せずに「リモート討論会」に決定したこと、同月29日に3回目の討論会を主催しないことを挙げて、バイデン陣営の意向に沿っていると強く非難しました。つまり、委員会は中立ではなく、バイデン陣営の見方をしていると言いたいのです。

 ステピエン氏は1回目のテレビ討論会の司会を務めた米FOXニュースのクリス・ウォレス氏が、トランプ大統領に対して「悪意のある言葉を向けた」と批判しました。司会者が不公平であったと言いたのでしょう。

 最終回のテレビ討論会では、相手候補が司会者の質問に回答している2分間は、マイクがオフになります。この新ルールについてもステピエン氏は書簡で反対しました。ただ、これに関してはトランプ・バイデン両陣営がすでに合意をしたものです。

なぜ「外交問題」なのか? 

 では、トランプ陣営はなぜ外交問題にこだわるのでしょうか。もちろん、4年間のトランプ氏の外交成果をリストして成果を強調したいことは間違いありません。ただ本音は別のところにあります。

 上で紹介したように、1つ目のテーマは「新型コロナウイルスとの戦い」です。トランプ陣営は新型コロナウイルスを国内問題ではなく、外交問題の中に入れて討論したいのです。

 新型コロナウイルスを国内問題として扱った場合、バイデン氏は米国における死者数が22万人を突破し、感染者数も800万人を超えたと述べて、トランプ政権のコロナ対策の失敗に有権者の目を向けさせるからです。

 加えて、トランプ大統領がホワイトハウスの感染対策チームのアンソニー・ファウチ博士を「ばか者」「大惨事」と呼んだと指摘して、科学を軽視していると畳みかけてきます。これに対して、トランプ大統領は新型コロナウイルスの問題を外交問題として扱い、「中国責任論」にもっていきたのです。


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