2024年12月23日(月)

海野素央の Democracy, Unity And Human Rights

2020年10月16日

13日ペンシルベニア州ジョンズタウンで集会を行ったトランプ大統領。地方の小さな町にもかかわらず、多くの人が集った(AP/AFLO)

 今回のテーマは、「トランプは本当に逆転できるのか?」です。投票日まで残り19日になり、ドナルド・トランプ米大統領は重大な局面に直面しています。不利な選挙状況の中で、果たしてトランプ大統領の逆転はあるのでしょうか。

 本稿ではトランプ氏の誤算について述べたうえで、鍵を握る2つの激戦州フロリダとペンシルべニアに焦点を当てます。

トランプの「5つの誤算」

 終盤戦を迎えたトランプ大統領には、少なくとも5つの誤算がありました。第1の誤算は、10月15日の大統領候補のテレビ討論会が中止になったことです。

 テレビ討論会を主催する委員会がリモートによる討論会での開催を発表すると、トランプ大統領は即座に「時間の無駄だ」と述べて拒否しました。トランプ氏は駆け引きに出たのです。

 おそらく「リモート討論会」欠席の意志表示をしておき、15日の直前に「陰性のカード」を切って、バイデン氏を討論会に引きづり出そうという狙いがあったのでしょう。この狙いは、委員会が先に中止を発表したので、見事に外れました。

 そこで、トランプ陣営のビル・ステピエン選対本部長は10月29日に第3回目のテレビ討論会の開催を提案したのです。支持率でリードしているバイデン陣営はその提案を決して呑まないでしょう。

「カンター・オクトーバー・サプラウズ」の不発

 第2の誤算は、ウィリアム・バー米司法長官が16年大統領選挙におけるオバマ前政権のトランプ陣営に対するスパイ活動に関する報告書を、11月3日の投票日の前に出さないと述べたことです。

 新型コロナに感染して自分に不利なオクトーバー・サプライズを自ら作ってしまったトランプ大統領には、それに対抗するために、この報告書を自分に有利な「カウンター・オクトーバー・サプライズ」に変える思惑があったことは確かです。

 前回の米大統領選挙でジェームズ・コミー前米連邦捜査局(FBI)長官は、投票日の11日前にヒラリー・クリントン元国務長官に関するメール問題の捜査再開を発表しました。その発表が、クリントン氏に不利なオクトーバー・サプライズとなり、どちらの候補に投票するのか決めかねていた13%の有権者の票を動かしたといわれています。もちろん、トランプ氏に有利に働いた訳です。

 その結果、コミー氏は党派色の強い政治的意思決定を下したと、非難を浴びました。仮にバー長官が投票日直前にオバマ前政権のトランプ陣営へのスパイ活動に関する報告を出せば、トランプ氏に有利なオクトーバー・サプライズになる可能性が高まります。バー氏はコミー氏と同じ轍を踏みたくなかったのでしょう。

 トランプ大統領はバイデン前副大統領を「犯罪者だ」と呼び、バー氏の決定を「恥となるもの」として激しく批判しました。トランプ氏の「カウンター・オクトーバー・サプライズ」が不発に終わったからです。


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