2024年12月23日(月)

海野素央の Democracy, Unity And Human Rights

2020年10月28日

 今回のテーマは、「米大統領選挙の勝敗を決める2人」です。共和党大統領候補のドナルド・トランプ氏及び、民主党大統領候補のジョー・バイデン氏によるテレビ討論会が終了しました。トランプ・バイデン両陣営は、登録した有権者を対象にGOTV(Get Out The Vote:投票に行こう)と呼ばれる運動を展開しています。

 今回の米大統領選挙では、どのような要因が勝敗を決定するのでしょうか。本稿ではその要因を中心に述べます。

最高裁判事の就任が承認されたエイミー・バレット氏(AP/AFLO)

有権者登録者数 

 激戦6州の中でも、特に注目を浴びている南部フロリダ州(選挙人29以下同)並びに東部ペンシルべニア州(20)における有権者登録者数をみてみましょう。フロリダ州での新規有権者登録者数は共和党が約34万4000人、民主党が約19万8000人です。共和党が約15万人上回りました。

 ところが、フロリダ州全体の有権者登録者数は約1400万人で、そのうち民主党が約530万3000人、共和党が約516万9000人です。民主党が約13万4000人リードしています。

 ちなみに、2016年米大統領選挙において、トランプ大統領はフロリダ州で民主党のヒラリー・クリントン元国務長官を1.2ポイント差、票数にして約11万2000票差で破りました。ということは、民主党は今回の選挙で登録有権者を投票所に出向かせることができれば、同州を奪還できるかもしれません。

 一方、ペンシルべニア州における新規の有権者登録者数は、共和党が約22万人、民主党が約11万人です。こちらは共和党が民主党よりも約2倍の有権者を登録させました。

 ただ、ペンシルべニア州全体の有権者登録者数は約900万人で、うち民主党が約419万9000人、共和党が約349万4000人です。こちらは民主党が約70万5000人も上回っています。

 前回の選挙においてトランプ大統領は、ペンシルべニア州でクリントン氏を0.7ポイント差、票数にして僅か4万4000票差で破りました。従って、民主党が有権者登録した支持者を投票所に行かせることができれば、フロリダ州よりもペンシルべニア州で勝利する公算は高いといえます。

白人票と党員数

 16年米大統領選挙の出口調査の結果をみてみましょう。トランプ大統領は、白人票においてクリントン氏に対して20ポイント差(57%対37%)で勝利を収めました。ただ20年の選挙では、トランプ氏は白人票の獲得にかなり苦戦を強いられています。

 世論調査で定評がある米クイニピアック大学(東部コネチカット州)の調査(20年10月16~19日実施)によれば、白人の支持率はトランプ大統領が49%、バイデン前副大統領が46%で、同大統領のリードは僅か3ポイントです。その理由は一体、どこにあるのでしょうか。

 白人有権者におけるトランプ大統領の新型コロナ対応に対する強い不満があります。

 筆者が昨年から取材を続けている西部コロラド州コロラドスプリング在住の「隠れバイデン支持者」の妻(60代白人)は、4年前にトランプ大統領に投票しました。しかし、彼女はトランプ氏のコロナ対応に強い不満があり、今回の選挙では同大統領には投票しないと語っています。

 加えて、以前指摘しましたが人口動態の変化は看過できません。ブルッキングス研究所とNPR(米公共ラジオ)によれば、16年米大統領選挙において投票資格のある高卒以下の白人有権者は45%でしたが、20年は4ポイント減少して41%になりました。高卒以下はトランプ大統領の支持基盤です。

 一方、大卒の白人は24%から26%になり、2ポイントアップしました。つまり、トランプ大統領の支持基盤が縮小しているということです。

 党員数の変化にも注目です。無党派層が初めて共和党員を抜きました。その結果、民主党員が40%、無党派層が30%、共和党員が29%の構成になりました。共和党員の減少もトランプ氏に不利に働くかもしれません。


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