2024年11月22日(金)

海野素央の Democracy, Unity And Human Rights

2020年11月18日

海野教授の恩師が泣いた「本当の理由」

 11月3日の投開票後、留学時代の恩師(60代白人女性)が涙を流しているという内容のメールが、彼女の夫(70代黒人男性)から入りました。恩師は筋金入りの民主党支持者なので、バイデン氏の勝利に感激のあまり涙を流していると筆者は解釈しました。ところが、彼女は7200万人以上の有権者がトランプ大統領に投票した事実を知り、悲しみのあまりに涙が出たというのです。

 恩師の夫は、「トランプに投票をした人々は、少数派と多数派が2042年に逆転するのを恐れている」と書いて、メールを筆者に送ってきました。「人々」とは主として「白人」を指しています。彼は白人は非白人の人口が彼らを上回ることに、恐怖心を抱いていると言うのです。

 米NBCニュースによれば、12年米大統領選挙では5ポイント以下で勝敗が決定した大接戦州は僅か4州(オハイオ、バージニア、ノースカロライナ、フロリダ)でした。それに対して、20年は8州(ウイスコンシン、ミシガン、ペンシルべニア、ノースカロライナ、ジョージア、フロリダ、ネバダ、アリゾナ)も存在しました。この8年間で、米国社会の分断が深化したので、大接戦州も倍になったのでしょう。

 米世論調査機関「ピュー・リサーチ・センター」の米国社会における分断に関する調査(20年10月6~12日実施)では、89%のトランプ支持者が「仮にジョー・バイデンが大統領に就任したら、米国に傷痕を残す」と回答しました。一方、90%のバイデン支持者が「もしドナルド・トランプが大統領に就任したら、米国に傷痕を残す」と答えています。つまり、双方の支持者は、全く相容れないといっても過言ではありません。

 しかも同調査によれば、82%のバイデン支持者が新型コロナウイルスを「非常に重要」な争点に挙げたのに対して、トランプ支持者は僅か24%でした。新型コロナウイルスに対する認識においても「分断」が明らかになっています。

 要するに、バイデン氏には次の4年間でトランプ氏に投票をした7200万人を切り崩す戦略が求められているのです。

  
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