海野素央の Love Trumps Hate

2020年12月3日

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海野素央 (うんの・もとお)

明治大学教授 心理学博士

明治大学政治経済学部教授。心理学博士。アメリカン大学(ワシントンDC)異文化マネジメント客員研究員(08年~10年、12年~13年)。専門は異文化間コミュニケーション論、異文化マネジメント論。08年と12年米大統領選挙で研究の一環として日本人で初めてオバマ陣営にボランティアの草の根運動員として参加。激戦州南部バージニア州などで4200軒の戸別訪問を実施。10年、14年及び18年中間選挙において米下院外交委員会に所属するコノリー議員の選挙運動に加わる。16年米大統領選挙ではクリントン陣営に入る。中西部オハイオ州、ミシガン州並びに東部ペンシルべニア州など11州で3300軒の戸別訪問を行う。20年民主党大統領候補指名争いではバイデン・サンダース両陣営で戸別訪問を実施。南部サウスカロライナ州などで黒人の多い地域を回る。著書に「オバマ再選の内幕」(同友館)など多数。

左派はバイデン人事に納得するのか?(AP/AFLO)

 今回のテーマは、「バイデンの『懸念材料』バーニー・サンダース」です。ジョー・バイデン次期米大統領は11月23日、外交・安全保障チーム、同月29日に経済チームの主要閣僚・高官を発表しました。

 ただ、その中には民主党大統領候補指名争いを戦い、撤退後バイデン氏を支持した急進左派のバーニー・サンダース上院議員(無所属・東部バーモント州)及び、エリザベス・ウォーレン上院議員(民主党・東部マサチューセッツ州)が含まれていませんでした。

 加えて、外交・安全保障チームには、国防長官の最有力候補と目されているオバマ前政権のミシェル・フロノイ元国防次官の姿もありませんでした。本稿では、バイデン次期大統領とサンダース上院議員並びにフロノイ氏の関係について述べます。

バイデンの思い

 バイデン氏は米NBCテレビのインタビューで、今回の上院選と下院選において、共和・民主両党の議席が拮抗したので、サンダース・ウォーレン両氏には議会に止まってリーダーシップを発揮していもらいたいと、自身の考えを明らかにしました。そのうえで、両氏を閣僚に入れないのは、「彼らに能力がないからではない」と説明しました。

 確かにサンダース・ウォーレン両上院議員が入閣すると、フィル・スコット知事(東部バーモント州)及びチャーリー・ベーカー知事(東部マサチューセッツ州・共に共和党)が、2人の議席を補充するために、共和党議員を指名する可能性が高まります。仮にそうなれば、共和党上院は来年1月5日に決選投票が行われる南部ジョージア州の2議席を含め、最大で54議席まで伸ばせることになります。

 一方、下院選において民主党は多数派を守ったものの、9議席を減らしました。ということは、民主党大統領候補指名争いで崖っぷちのバイデン次期大統領を救った黒人の重鎮ジム・クライバーン下院議員(民主党・南部サウスカロナイナ州)も入閣しないということでしょう。バイデン氏は下院でのクライバーン院内幹事のリーダーシップに期待しています。

サンダースのけん制

 これに対して労働長官の候補に名前が挙がっているサンダース上院議員は、AP通信とのインタビューの中でバイデン新政権における急進左派の必要性を強調しました。そのうえで、「仮に共和党関係者と民主党保守派を入閣させ、急進左派を無視して『チーム・オブ・ライバルズ』を作ったら、(左派を)非常に侮辱している」と述べて、バイデン次期大統領をけん制しました。

 ただ、今回の大統領選挙において共和党員でバイデン氏を応援した「リンカーン・プロジェクト」の共同創設者ジェニファー・ホーン氏は、社会主義者であるサンダース氏を支持しないと断言しています。加えて、筆者が昨年から取材を行っているバイデン氏に投票をした共和党保守本流の「隠れバイデン支持者」は、民主党大統領候補がサンダース氏ないしウォーレン氏ならば同党に投票していませんでした。

 要するに、バイデン氏はサンダース氏及びウォーレン氏を閣僚に起用すると、「リンカーン・プロジェクト」並びに「隠れバイデン」の支持者を失うことになります。共和党員にも団結を呼びかけているバイデン氏は、この点を考慮に入れたのかもしれません。

 しかも、バイデン氏はサンダース・ウォーレン両氏を閣僚に指名した場合、議会での承認公聴会が難航する公算が高くなることも計算に入れたフシがあります。というのは、バラク・オバマ前大統領及びドナルド・トランプ大統領と異なり、バイデン次期大統領は上院で多数派をとれずに、政権運営をする可能性があるからです。仮にそうなれば、共和党が承認公聴会の主導権を握ります。

 ちなみに、民主党は09年上院で57議席(無党派を含む)、共和党は17年同院で52議席を占めて多数派でした。オバマ前大統領とトランプ大統領にはアドバンテージがあった訳です。

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