フロノイの扱い
国防長官人事にもサンダース氏を頂点とした急進左派が絡んでいます。複数の米メディアによれば、フロノイ氏は09年、アフガニスタンへの米軍増派を主張し、それに慎重なバイデン氏と反対の立場をとりました。急進左派からみればフロノイ氏は正真正銘のタカ派です。サンダース上院議員が指摘した「民主党保守派」とはフロノイ氏を指しているのでしょう。
さらに、急進左派はロッキード・マーチンやボーイングなどの軍需産業から資金提供を受けたシンクタンクの共同創設者であるフロノイ氏を受容することはできません。逆に、共和党は同氏を歓迎する公算が高いです。
中道穏健派のバイデン次期大統領と急進左派のサンダース氏との間に軋轢が存在するのは事実ですが、そもそも同次期大統領はフロノイ氏に全幅の信頼を置いていないのです。それが国防長官人事が難航している主因かもしれません。
バイデンとサンダースの人間関係
ドナルド・トランプ大統領は選挙期間中、民主党の急進左派に社会主義者のレッテルを貼り、「バイデンは彼ら(急進左派)の操り人形だ」と批判しました。トランプ氏はサンダース氏に加えて、バイデン氏までも社会主義者と呼んだのです。
さらに、トランプ氏は多数の州で予備選挙と党員集会が一斉に開催される「スーパー・チューズデー」までにウォーレン氏が選挙戦を撤退しなかったので、サンダース氏はバイデン氏に敗れたと、自身のツイッターに繰り返し投稿しました。その狙いは急進左派の「分断」です。
もちろん、トランプ大統領にはバイデン次期大統領とサンダース上院議員との関係を悪化させる思惑もありました。16年米大統領選挙で、トランプ大統領はクリントン元国務長官とサンダース上院議員の対立を煽り、分断することに見事に成功しました。トランプ氏にとって、今回もサンダース氏は利用価値の高い候補でした。
ただ、サンダース上院議員は民主党大統領候補指名争いから撤退すると、即座にバイデン氏に対して支持表明を行いました。サンダース氏はその理由について、「私はヒラリー・クリントンよりもジョー・バイデンとの関係の方が良い」と、米メディアに説明しました。バイデン新政権の成否を占う重要な要素は、バイデン氏とサンダース氏の人間関係の維持になるかもしれません。
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