2024年11月22日(金)

Wedge REPORT

2020年12月21日

「感染経路」と「感染予防」
押さえておきたいポイント

 逆に死亡率の低下という事実だけに着目し、「新型コロナはただの風邪である。高齢者が肺炎で亡くなるのはよくあることであり、毎年インフルエンザは1万人が関連死をしているのに、新型コロナでは2000人前後しか死亡していない」という論調があるが、これはまったくもって誤った認識である。経済活動を強く止める方法をとり、国民のほぼ全員にマスクを着用させ、人との接触を可能な限り避けるという過去に類を見ない対策を国中で行って抑え込んで、やっとこの感染者数で収まっているという事実にあえて目を向けていないからである。

 現実に欧米では新型コロナによって、例年のインフルエンザの死亡数の数倍の死者が出ている。死亡率でいえば、インフルエンザの100倍ともされるこの病気がインフルエンザ並みに広がったら、日本だけで単純に1年あたり10万~100万人の死者が出る。そこに医療従事者の感染が続けば病院機能が崩壊し、救えるはずの他の疾患の方も救えなくなる。これだけは絶対に避けなければならない。

(出所)筆者作成 写真を拡大

 とはいえ、経済活動を強く止めなければ、新型コロナの感染を防げないわけでは決してない。新型コロナの感染経路は「接触感染」「飛沫感染(マイクロ飛沫感染含む)」である。それらを詳細に説明したのが(右図)である。

 接触感染について、紙や鉄、ステンレスなどには1~3日程度ウイルスが生存しうると言われているが、実際には温度湿度に加え、雨風や紫外線などの影響を受けることで極めてその生存時間は短くなる。特に夏の熱い日の紫外線では数分で死滅するとも言われ、最近では当初の想定より接触感染で感染が成立する頻度は低い可能性も指摘される。この接触感染に対して最も有効なのは手洗いである。石鹸でもアルコール消毒でも速やかにウイルスを除去できる。ただし手のひら、指の間、手背(しゅはい)、親指、手首などを含めてしっかり洗うことで初めて効果が出るため、「正しい手洗い」が重要である。

 新型コロナの主な感染経路とされるのは「飛沫感染」である。咳やくしゃみなどの飛沫を浴びることで感染が成立するが、一般的に飛沫は2~3㍍程度の飛距離があるため、距離をとることで感染の回避が可能である。少し会話をした程度で感染することはほぼないが、何度も飛沫を浴びることで感染リスクは上昇する。つまり接触時間を考慮する必要がある。

 感染リスクが上がるのはおおむね1~2㍍の距離で15分以上接触していた場合であり、これが現在の「濃厚接触者」の定義とされている。そのためこのように近い距離にいる場合は他者へ飛沫を飛ばさないためにマスクをつけることが推奨される。しかし、マスクは大きな飛沫を抑える力はあるが、小さなウイルスを抑える力はない。マスクの力を過信せず、しっかりと人との間の距離を保つことは大事である。

 加えて、距離があっても感染する状況がある。いわゆる換気の悪い3密(密接・密集・密閉)を満たす空間である。こういった空間ではウイルスが地面に落ちず数時間空間に滞在するため、距離をとっていても、マスクをしていても、感染が成立しうる。これをマイクロ飛沫感染という。湿度や温度が低い冬は特に注意が必要である。そのため、しっかりと換気を行うこと、換気の悪い空間では滞在を最小限にすることが感染リスクを下げる方法である。


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