2024年4月24日(水)

Wedge REPORT

2020年12月21日

 年末年始を利用して久しぶりに実家への帰省や旅行を計画している人もいるだろう。「Go Toトラベル」なども感染拡大の槍玉に挙がっているが、肝心なのは〝どこに行くか〟よりも〝何をするか〟である。人里離れた所に旅行するより、感染者の多い繁華街で毎晩大騒ぎする方がリスクは高い。これまでクラスター(感染者の集団)が発生したジムやライブハウス、カラオケ店といった特定の場所が悪いわけではない。どこに居ても感染リスクを避けるよう常に注意して行動することが肝要である。

 手洗いやマスク、人との間に距離を保つとともに、1時間に5分でも換気をすることで3密空間を作らないこと、少しでも体調不良を感じたら人と接触しないこと、などをきちんと継続して行ってほしい。

一人ひとりの感染予防こそ
新型コロナ打倒の鍵

 このように結局、感染を防ぐのは、政府による「自粛要請」や「経済活動の停止」ではない。一人ひとりの感染予防の意識と行動こそが、新型コロナを打倒する鍵である。「自分がかかっても死なないからいいや」という人がいるかもしれないが、自分が知らない間に家族や友人などの大切な人に感染させて重症化させるかもしれないという想像力を持つ必要がある。

 残念ながらこのウイルスを終息させることはできないだろう。無症状でも感染力があり、国内外を人が移動する限りはどうしても存在し続けてしまう。ワクチンが完成しても、劇的な効果があるかは不明であり、現在感染をコントロールできている国々でも将来的には国際往来の再開により患者数が増加し、医療危機に襲われる可能性がある。

 政府は現在「ハンマー&ダンス」という方針をとっている。これは、新型コロナが0にはできないウイルスであることは早期から認識していたため、「増えたら自粛、減ったら活動再開」のように感染者数増加の波が来るたびにその都度対応するという方針である。

 つまり、経済再開をしながら、患者の増加が始まった段階で国民一人ひとりが自身の行動を見直して感染対策を行う意識を高める必要がある。国はそのタイミングを明示しているにすぎない。「患者が増えるのは国の失策である」という考えで責任を誰かに押し付けているだけでは、新型コロナと向き合って生活していくことや共存していくことはできないのだ。

 現在、感染者には「咳や微熱などの症状があるのに出歩いた人」が多く認められる。感染症の対応の基本的な考え方は「広げなければ良い」と「重症者を救えれば良い」の二つである。つまり、症状があり、自身の感染が疑われたら自主的に仕事や会食を休んで拡大の原因にならないようにすること。症状が増したら、病院に入院して適切な医療を受けること。この二点がしっかりと守られていれば感染拡大も死亡数もコントロールできる。「体調のすぐれない人は休む、休ませる」ということを社会全体として受容し、実行していくことは大事な観点である。

 今年は別の厄介な感染症であるインフルエンザを例年以上に抑え込めている(下図)。国民一人ひとりの感染予防・対策への意識と行動が奏功している証左であり、インフルエンザウイルスにとっては〝生きづらい世の中〟になっている。われわれはすでに感染対策の結果を実感できているのだ。

(注)インフルエンザの定点当たり(1医療機関当たり)報告数
(出所)国立感染症研究所「疾病毎定点当たり報告数-速報値」を基にウェッジ作成 写真を拡大

 手洗いや距離を保つこと、換気をすることなどは何も難しいことではない。大切なのはそれを継続することである。われわれは新型コロナのことを今一度しっかりと理解して、必要な対策を常に続けることを心がけていけば、この冬も、そしてその先も、この困難を乗り越えることができる。

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■取られ続ける技術や土地  日本を守る「盾」を持て
DATA            狙われる機微技術 活発化する「経済安保」めぐる動き        
INTRODUCTION アメリカは本気 経済安保で求められる日本の「覚悟」
PART 1         なぜ中国は技術覇権にこだわるのか 国家戦略を読み解く  
PART 2         狙われる技術大国・日本 官民一体で「営業秘密」を守れ     
PART 3         日本企業の人事制度 米中対立激化で〝大転換〟が必須に 
PART 4     「経済安保」と「研究の自由」 両立に向けた体制整備を急げ   
COLUMN       経済安保は全体戦略の一つ 財政面からも国を守るビジョンを   
PART 5         合法的〟に進む外資土地買収は想像以上 もっと危機感を持て   
PART 6         激変した欧州の「中国観」 日本は独・欧州ともっと手を結べ 
PART 7         世界中に広がる〝親中工作〟 「イデオロギー戦争」の実態とは?
PART 8       「戦略的不可欠性」ある技術を武器に日本の存在感を高めよ         

  
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◆Wedge2021年1月号より

 

 

 

 

 

 

 

 


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