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2020年12月20日

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宮本雅史 (みやもと・まさふみ)

産経新聞編集委員

1953年、和歌山県生まれ。慶應義塾大学法学部卒業後、産経新聞社入社。ゼネコン汚職事件のスクープで日本新聞協会賞を受賞。警視庁クラブキャップ、司法記者クラブキャップなどを歴任。書籍編集者、フリージャーナリストを経て現職。著書に『爆買いされる日本の領土』(角川新書)など。近著に『国難の商人 白石正一郎の明治維新』(産経新聞出版)。
 

  日本の不動産が外国資本、とりわけ中国資本に買収されていることが指摘されるようになって10年以上になる。この話題になると多くの日本人は買収する外国資本を批判するが、日本には外国資本の不動産売買を規制するルールがないのをご存じだろうか。買収する側からすると不動産買収は一つの商いであり何ら違法ではなく、問題は、日本人の危機意識の欠如につきる。

 政府はこれまで何度もルールを作ると強調してきたが全く進展してこなかった。それがようやく重い腰を上げそうだ。安全保障上重要な土地の買収に関して、有識者会議を設置し、重要防衛施設周辺や国境離島に区域を指定し、土地購入者に国籍など事前届出を義務付けるなど2021年の通常国会での法案提出を目指すという。これまでの消極的な対応からすると大きな進歩だが、安全保障上重要な土地(防衛施設周辺など)と限定していることが不安だ。

 安全保障とは軍事防衛だけではなく食糧や発電、水、地下資源、海運なども含まれるからで、防衛施設周辺に限らず、農地や森林、港湾などすべての不動産を対象にすべきではないか。国家とは「国土(領土)」「国民」「主権」があって成り立つもので、一つも欠けてはいけない。外国資本の買収ぶりを見ると、時すでに遅しとも思えるが、一刻も早い法案成立が求められる。

中国資本に土地を買収された洞爺湖町の山林地帯では、工事が行われていたものの、現在は野ざらしとなっている(MASAFUMI MIYAMOTO)

喉から手が出るほどほしい
日本列島と日本海

 通称「逆さ地図」と呼ばれるものがある。通常の日本地図を180度回転させ、大陸側から日本を見るユニークな地図だ。中国や韓国、ロシアからみると、北海道から奄美大島(鹿児島県)、沖縄まで、日本列島そのものが要塞の役割を果たし、太平洋に進出する際の大きな障害になっていることに気づく。この日本列島を押さえると、太平洋進出の拠点にでき、日本海と東シナ海を実質、領有化できる。大陸側からすると喉から手が出るほど欲しい〝地域〟であることは想像に難くない。

 自衛隊関連施設周辺や森林、農地、観光施設など外国資本による不動産買収が取り沙汰されるたび、必ずと言っていいほど聞かれることがある。それは「意図は何か?」ということだ。

 「意図」は筆者にもわからない。ただ、確実に言えることがある。「国土(領土)」が侵害されることは、国家の存続にかかわるということだ。

 しかも、日本には、外国資本による不動産売買を規制するルールがないから、外国資本は〝合法的〟に土地取得が可能で、売買契約が成立して所有権が移れば、何に利用するのか、どう開発するかは所有権者の思いのままなのだ。日本国内でありながら、どのように開発、利用されても、指をくわえて見ているほかないのである。

 筆者は08年から、韓国資本に不動産が買収され続けている対馬(長崎県)の定点観測を始め、その後、沖縄、佐渡(新潟県)、五島列島(長崎県)、礼文・利尻島(北海道)、北海道本島、奄美大島などを訪ね、同じように外国資本(主に中国資本)による土地買収の動向を注視してきた。結論から言うと、中国資本による領土買収は拡大の一途をたどり、現地を訪ねるたびに、様変わりし、中国流「経済侵攻」の現実に驚かされてきた。それは防衛施設や離島、原発周辺といった場所だけではなく、森林やリゾートといった「一般の」土地への買収にも広がっている。その実態を最も買収が進んでいるといえる北海道での客観的事実と証言からあぶり出したい。

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