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2020年12月20日

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宮本雅史 (みやもと・まさふみ)

産経新聞編集委員

1953年、和歌山県生まれ。慶應義塾大学法学部卒業後、産経新聞社入社。ゼネコン汚職事件のスクープで日本新聞協会賞を受賞。警視庁クラブキャップ、司法記者クラブキャップなどを歴任。書籍編集者、フリージャーナリストを経て現職。著書に『爆買いされる日本の領土』(角川新書)など。近著に『国難の商人 白石正一郎の明治維新』(産経新聞出版)。
 

緊急事態には
〝治外法権〟発動の懸念

 動きがすべて謎なのだ。道内のある不動産業者は中国資本が観光地や宿泊施設を次々と買っていることをあげ、「推測」と前置きして「栄えていない観光地や老朽化したビル、コンドミニアムでも押さえておけば、中国政府が緊急事態と言った瞬間、人民解放軍の兵舎や移住先に変わる可能性がある。これはもう乗っ取りともいえる」と危機感をあらわにした。

 中国では、10年2月、国防動員法なる法律が採択、公布され、同年7月に施行された。全14章72の条文からなり、一言でいうと、中国国内で戦争や武力衝突が起きた場合、金融機関や交通輸送手段、港湾施設、報道やインターネット、医療機関、建設、貿易、食糧など、民間資源をすべて政府の管理下に置くことができるというものだ。さらに、動員命令が出されると18~60歳の男性と、18~55歳の女性が国防義務を負うことになる。免除条件に「外国に居住する者」とは書かれていないため、日本にいる中国人も有事の際は中国軍に動員され、日本にいながら破壊活動や軍事活動を展開する要員になる。

 11年3月11日の東日本大震災時、新潟の中国総領事館が5日後の16~21日に、東北地方に住む中国人1万人以上を新潟市体育館など3カ所に集め、5711人を新潟空港から30便の臨時便で上海とハルピンに向けて出国させた。ところが、この3カ所には日本人は立ち入れなかった。ある県議会関係者は「総領事館は治外法権になるが、市の施設を貸しただけなのに、体育館なども治外法権になった」と語る。

 もし、国防動員法が発令され、動員された在日の中国人が買収された森林や農地などに集結するとどういう事態になるのか。新潟のケースを当てはめると背筋が凍る。

 在京のある中国人評論家は「海外で活動する中国企業の背後には中国共産党が控えていると考えた方がいい。中国と関係がある日本企業も同じことが言える」とした上で、「中国は一つの目的を持って、25年前から沖縄を狙い、20年前から北海道を狙ってきた。これからもどんどん土地を買っていくでしょう。水源地や農地では農作物を作れるから独自の集落や自治区をつくり、病院や軍隊用の事務所を設置する可能性がある。山間部の僻地はほかの地域との交流が少ないので、自由に人の行き来ができない閉ざされた社会を作ろうと思えば簡単にできる」と警告する。

富良野、トマム、サホロ
リゾート地を外資が支配?

 ここ数年は富良野が人気の的だという。富良野と言えば、国民的ドラマ「北の国から」の舞台になったことで知られるが、親しい北海道の不動産業者によると、3年ほど前、ドラマのロケ地「麓郷の森」(3・6㌶)に高級リゾート施設を造る計画が浮上。この計画に、中国・北京の不動産投資家が参画したいと名乗りを上げてきた。麓郷地区は、東大演習林など豊かな自然に囲まれるが、投資家はよほど気に入ったのだろう。「麓郷の土地を買いたい」と相談されたという。開発計画はその後延期となり、麓郷の森を所有する製材業者も中国資本への売却を拒否したため、売買は成立しなかった。

 同じころ、富良野スキー場の麓に広がるなだらかな斜面約4㌶が中国資本に買収された。17年6月30日付けの北海道新聞によると、富裕層向けの滞在施設や農業体験ができる畑、中国の書などを併設する計画だとされるが、富良野市企画課によると「工事は止まっていて、現状把握できていない」。

 富良野の大手不動産業者によると、ここ2年は、中国や香港、シンガポール、タイ、オーストラリアなどからの投資が活発だという。外国人の投資家が目を付けたことで地価が上がり、2年前は坪10万円以下だったのが、昨年頃から坪30万円を越えた。富良野のスキーエリアは、市街地が2、3㌔と近いため住宅が多く、別荘やホテルと混在しているが、地価の高騰で住宅を手放す住民も増え、並行して外国資本による別荘が増加しているという。

 そこで、こんな声が上がっている。富良野から車で一時間圏内に星野リゾートトマム(占冠村)やサホロリゾート(新得町)があり、冬季は直行バスでつながっている。すでに中国資本が本格的に進出しているとされるトマムやサホロとつながることに、「富良野のスキーエリアから日本人の住民が流出、近い将来、中国人の町になってしまう可能性が高い。富良野からトマムやサホロ、さらに太平洋までの広大な地域が中国資本に押さえられてしまう危険性は否定できない」。

 1995年、中国の李鵬首相(当時)がオーストラリアのキーティング首相(同)に「日本という国は40年後にはなくなってしまうかもわからぬ」と述べたとされる。この「李鵬発言」は日本の国会でも報告されたが、検証されることはなかった。

 先述したIR汚職事件の背後にある「居留区準備」証言にうなずいた理由を理解していただけたと思う。あまり強調すると、「オオカミ少年」と揶揄されそうで断定はできないが、客観的な事実だけを見ても、居留区構築に向けて着々と準備が進められているのが想像できる。

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