世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2020年12月24日

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 オーストラリア戦略政策研究所(ASPI)所長を務めるピーター・ジェニングス(元国防次官)が、悪化する対中関係を前にして豪州に如何なるオプションがあるかを、12月5日付けのASPIStrategistで論じている。

Shivendu Jauhari / Nerthuz / iStock / Getty Images Plus

 ジェニングスの論説は、新型コロナウイルスの起源の独立した調査の提唱の故に、事態がここまで悪化せねばならなかったのかと問うている。

 事態は外交には何の関係もないとし、原因を、「すべては中国と豪州とが相容れない戦略的目標と利益を有している事実と関係している。」と述べ、戦略的利益の対立に帰している。しかし、豪州の首相および閣僚が調査を提唱したことが引き金を引いたことは間違いない。

 だからと言って、事態を旧に復するための良策がある訳ではない。中国の経済的威圧に屈服する選択肢があろう筈もない。ジェニングスの論説は、旧に復する可能性は中国自ら永久に閉ざしつつあると観察しているようですらある。

 ジェニングスは、豪州が中国に対抗するための4つのオプションを提示している。それらは、①米国との同盟、②他の民主主義諸国がどう中国に対応するかを方向付ける能力、③鉄鉱石、④中国の消費者が好むオーストラリアが生産する豊かな産品である。

 このうち、1つ目の米豪同盟に関しては、米海軍が第一艦隊を復活するに当たり、バイデン政権に協力することによって米国との同盟を強化すべしとの提言に留意を要しよう。この計画は、12月2日、ブレイスウェイト海軍長官が上院軍事委員会の小委員会で証言して表明したもので、第七艦隊の管轄海域から東インド洋と西太平洋の一部とを分離して管轄することになる。既に決定された計画であるが、どこを拠点に艦隊が活動するかなど詳細は未定のようである。当初は陸上に司令部を置くことは予定されていないようである。この計画は米豪同盟および豪州の中国に対する立場を強化するが、インド・太平洋における米国の軍事的コミットメントの強化を狙ったものであり、我が国としても歓迎すべきものである。

 2つ目のオプション、他の民主主義諸国がどう中国に対応するかを方向付ける能力については、5Gからのファーウェイの排除の影響力等を具体例として挙げている。3つ目に鉄鉱石に関しては、中国は、豪州以外の供給源を見つけることは難しいだろうと述べている。4つ目の食料品、ワイン、木材等の豪州から中国への輸出品目については、中国の消費者の需要に応じたものであり梃にできると述べている。観光と教育も同様である。

 いずれのオプションもその短期的効果あるいは実行上の難点など問題はある。しかし、この論説は、中国の経済的締め付けに耐え、出来れば跳ね返したいと豪州の官民を鼓舞する意図で書かれたものであろう。我が国も先のモリソン首相の訪日の際の防衛面での協力など結束を固くすることが大切と思われる。

  
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