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World Energy Watch

2021年1月20日

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山本隆三 (やまもと・りゅうぞう)

常葉大学名誉教授

NPO法人国際環境経済研究所所長。住友商事地球環境部長などを経て現職。経済産業省産業構造審議会臨時委員などを歴任。著書に『電力不足が招く成長の限界』(エネルギーフォーラム社)など多数。

卸価格上昇と停電を経験した南オーストラリア州

 天然ガス、石炭に恵まれ化石燃料が大きな輸出産業である豪州の中で、南オーストラリア州は全く化石燃料を産出しない。化石資源はないが、南極からの風況には恵まれているため、州政府は、他州からの石炭、天然ガスに依存する発電設備を風力発電に切り替えることにし、温暖化対策もあり、2015年には石炭火力を廃止した(図-2)。

 その結果、2016年から夏場の冷房用電力需要急増時などに凪になると、電力供給量が不足し卸市場価格が高騰するようになった。挙句の果て、停電まで引き起こされてしまった。州政府は電力需要急増時に備え州間送電線の増強と新設に加え、蓄電装置の導入の検討を始めたが、その州政府に助け舟を出したのが、いまや世界一の富豪になった電気自動車メーカ・テスラのイーロン・マスクCEOだった。連邦と州政府首相に直接電話をし、100日以内に10万kWの蓄電池を設置すると約束し、できなければお代は不要と持ち掛けた。2017年、蓄電池は100日以内に設置され、その後蓄電池容量は拡大している。

 残念なのはこの蓄電池は米国でテスラと共同で電池製造を行っているパナソニック製ではなく、韓国製だったことだ。ただ、風力発電能力に対し大型とは言え蓄電能力は依然不足しており、州政府は揚水発電所を建設し蓄電能力を増強する計画だ。しかし、まだ時間がかかる。熱波来襲時夕方太陽光発電量が減少した際に凪になる、あるいは隣州からの電力供給に制限があると卸価格は急騰する。2019年1月には週平均の卸価格が1kW時当たり1豪州ドル(80円)を超えた(図‐3)。家庭向け小売価格の2倍以上にもなる。電力も商品である以上需要に対し供給が不足すれば価格が高騰するのは、当然のことだ。

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