2022年12月8日(木)

World Energy Watch

2021年1月20日

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山本隆三 (やまもと・りゅうぞう)

常葉大学名誉教授

NPO法人国際環境経済研究所所長。住友商事地球環境部長などを経て現職。経済産業省産業構造審議会臨時委員などを歴任。著書に『電力不足が招く成長の限界』(エネルギーフォーラム社)など多数。

自由化の成果は

 英国でも発電設備を保有しない小売り事業者が多く、2016年以来卸価格上昇を受け破綻が増えている。卸価格が下落している局面では新規に小売りを開始する事業者もいるが、結果として小売事業者の数は、2018年半ばの70社から2020年半ばには57社迄減少した(図‐4)。小売り事業者数に影響を与えているのは、変動する卸市場価格だ(図‐5)。卸市場価格が上昇すると、顧客数が少ない事業者は管理費をひねり出すことも難しくなる。

 

 2016年4月から家庭や商店向け小売りが自由化された日本では、電力小売り事業を新たに始める企業が続出した。資源エネルギー庁によると昨年12月28日時点で698社が登録されている。電力小売りを始めるには発電設備が必要な訳ではない。卸市場で電力を購入すれば始めることができる。顧客数が多くなれば、薄利多売で利益を得ることも可能と多くの企業が考えた結果の数だろう。販売電力量に新電力の占めるシェアも増え続け、昨年10月時点では18.6%に達している。

 電力では必要な量を必ず同時に供給しなければ停電になる。新電力が需要量と供給量を一致させることができなければ、送配電会社が不足分を一致させることとなり、新電力は送配電会社に未達成分のインバランス料金を支払う必要がある。経済産業省は1月15日インバランス料金の上限を1kW時当たり200円に設定することを決めたと報道された。新電力の負担を抑制する措置だろうが、200円では、新電力の負担は大きくは減らない。

 英国の例でも見られるように、電力自由化に伴い問題が発生することがある。例えば、新電力が破綻した時に小売り契約をどうするか、発生した費用の負担をどうするか、発電設備減少にどう対応するかなど試行錯誤のことも多い。自由化により消費者の選択肢は増え、中には電気料金が下がった消費者もいるだろう。しかし、新たに出てきた問題を解決するため制度はつぎはぎだらけになり、その社会的なコストは大きいのではないか。電力の安定供給と電気料金引き下げに、電力自由化はどれほど貢献したのだろうか。何を目的にしていた制度だったのだろうか。

 電力自由化により新規ビジネスのチャンスが生まれたが、自由化により稼働率の低い発電設備の維持が段々難しくなり、電力供給にも余裕がなくなった。結果、卸市場に電力供給を行うことが難しくなり、卸電力価格が大きく上昇したとすれば、自由化は何をもたらしたのだろうか。また、つぎはぎの制度が必要になるのだろうか。

  
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