居間・台所感覚の
ごちゃごちゃ感が刺激的
さて、“村内”を見てみよう。
見渡すと、まるで郊外の中古家具店かと思うくらい、よく言えばバラエティに富んだ、つまり、不揃いな家具が並んでいる。
夢のみずうみ村代表で、作業療法士の藤原茂さんは、「ごちゃごちゃ感を出すというのが私のコンセプトで、居間・台所感覚で作っているんです」と言う。応接間感覚ではないということだ。
「応接間感覚だと来る人はお客様ですよね。でもここでは応接間ではないから『○○様』とも呼びません。『○○さん』です。居間や台所感覚のごちゃごちゃした雰囲気の中で、なんだかおもしろそう、やってみたいという気持ちが湧いてくるんです」。
たんすなどの家具は、もちろん収納として使っているが、たくさん並べてあることのもう一つの意味は、伝い歩きができること。家の中では杖を使わずに家具やかべを伝いながら歩くことができるのと同じように、ここでも杖は入口近くの杖置き場に置き、一日を過ごすことができる。
壁面には身体を動かさずには回答ができないクイズや、チャレンジしたくなる「健康トリム(身体を動かす仕掛け)」などがいっぱい。どれもスタッフの手作りだ。それぞれに、それをやると生活の中でどんなよいことが期待できるかが書いてある。たとえば、すだれを巻いたり戻したりするコーナーには、「醤油をさす、塩こしょうをかけることが上手にできます」「ボタンを押す、スイッチを押す等生活で必要な指の動きがスムーズになります」といった具合だ。
太鼓など打楽器を自由に演奏できる部屋は「たたき部屋」、休憩場所は「青春のたまり場」などネーミングもユニーク。青春のたまり場ではおしゃべりしたり、ぼーっとしたりするだけでなく、自分でコーヒーをいれて飲んだりすることもできる。
床にはちゃんと段差だってある「バリアアリー」だ。もちろん車いすの人でも利用できるようにスロープもあるが、極力、外の世界と同じにしてある。そうでなければ、実生活に活かせるリハビリにならないからだ。あえてクッションをたくさん置き、バランスを崩して倒れる練習をする、「雲の上歩行」なる空間もある。