2024年12月4日(水)

医療を変える「現場の力」

2012年9月18日

支えられた人が支える側に

 夢のみずうみ村に見学に行くと、「水先案内人」と呼ばれる人が、意思が湧き出るさまざま仕掛けを、一緒に歩きながら教えてくれる。この人たちも、実は夢のみずうみ村の利用者だ。

 「できそう」なことを最初は支援しながら、「できる」に変えていく仕組みは、ここでも機能している。最初は歩くのが大変だったり、要介護状態になってから自信をなくし、人と接することを避けがちになっていた人たちも、ツアーコンダクターかというくらい見事に、長くて2時間もの水先案内人を務める。

 ある日の水先案内人をしてくれていたBさんは「朝、送迎の車の中で『今日やってくれませんか』って頼まれたので、いいですよって」とにっこり。脳梗塞の後遺症で、言葉と右半身が不自由だが、自由選択方式のプログラムに惹かれ、ここ1年ほど利用しているという。水先案内人を務めるようになってから独自のマニュアルもつくり、より分かりやすい説明を心掛ける。

 夢のみずうみ村には来客が多いということもあるが、何より利用者が水先案内人をすることで、その人のリハビリになる。Bさんの今日の予定の午前欄にはしっかり、「水先案内人」というメニューのカードが貼ってあった。

できるようになったら
知恵と技をお裾分け

 こうした先輩のような人たちの存在も、他の利用者から意思、すなわち「夢」を引き出すのに一役買っている。

夢のみずうみ村浦安デイサービスセンター事務主任の角谷さんは、ジャパン・ハンディキャップゴルフ協会の理事でもある。

 たとえば脳卒中で片方の手足が不自由になった人たちは、たとえ半身が麻痺していても、ふつうに生活ができる工夫を編み出し、それを“新人”たちに伝授してくれる。料理教室では、市販のまな板に工夫をし、片手でも魚を三枚におろせる方法、片手で白髪ネギを作る方法など、何でもできることを実演しながら教えてくれるのだ。できるようになった本人が目の前にいるのだから、説得力がある。

 会社を定年後、夢のみずうみ村浦安デイサービスセンターで職員として働いている角谷利宗さんは、企業の経営企画でバリバリ働いていた51歳の時に脳出血を起こし、今も左半身に麻痺が残る。しかし、もうできないとあきらめていたゴルフを、友人に誘われたことがきっかけで再開、片手でも170ヤードは飛ばせるようになり、今ではコースも回っている。夢のみずうみ村では事務主任の仕事をしつつ、要望があればゴルフを教えている。


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