WEDGE REPORT

2021年2月22日

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〝日本の人たちとこの喜びを共有したい〟

 日本のNHKの中継では解説を務めた元テニスプレーヤーの杉山愛さんと決勝戦終了直後に大坂はテレビインタビューでやり取りしている。その最後には日本語で「はい、こんにちわ。皆さん。今日は頑張りました。なんか、ね、ええと…」と緊張で言葉を詰まらせながらも、白い歯をのぞかせながら「ありがとうございました。勝ったよ!」と締めた。

 大坂は幼少時に日本を離れ、ほぼ米国育ちであるがゆえに日本語は正直あまり堪能ではない。だが〝日本の人たちとこの喜びを共有したい〟という思いから必死に勉強中の母国語を使って自ら感情移入しながら胸の内の本心を口にした姿には大きな共感を覚え、感動も湧き上がった。これについては多くの日本の人たちも、ほぼ同じ意見だと思う。

 長らく続くコロナ禍によって世界同様、日本も国民全体に暗いムードが漂って疲弊し切っている。これらによって我々はどうしても何かと物事に対して卑屈かつ攻撃的になる傾向が強まり、バッシングを向けることも多くなってしまっているが、大坂の〝純な喜び〟を示した日本語インタビューにはコロナ禍で疲弊する暗いムードを吹き飛ばすだけの力が込められていた。

 スポーツ取材の世界に携わって長らく経つが、コロナ禍で疎遠になってしまっていたアスリートによる「発信力」の強いインパクトも久々に感じることができた。

 スポーツの素晴らしさ、そして勝利することの喜び――。コロナ禍前までは当たり前のようにあった「日常」を世の中に再び思い起こさせるべく、大坂は自らの「発信力」を駆使して訴え、私たちがどうしても忘れがちになっていることをメッセージとして伝えてくれたような気がしている。回りくどい説明でいささか恐縮だが、少なくとも私はそう思っている。

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