上司と部下はガチンコで向かい合うべき
MBA修了後、帰国し、トーマツコンサルティングに入り、コンサルタントとして大企業、外資系企業を中心にコンサルティングに関わりました。トーマツコンサルティングは、平均的な日本企業よりはるかに合理的な考えで経営やマメジメントがされています。私にとって、とても快適な会社。ハッピーな職場で、嫌な上司や同僚、経験や記憶がほとんどありません。
その頃、1991年にバブル経済が崩壊したのです。多くの大企業は早いうちに建て直し、業績はU 字回復、もしくは V 字回復すると私は思っていました。その後約30年にわたり、これほどに低迷するとは想像できなかったですね。
今や、日本はOECD(経済協力開発機構)のデータ(2020年)を見ると、2019年の労働生産性(就業1時間あたりの付加価値)が加盟37カ国で21位。先進7カ国では、最下位。このまま続くと、世界市場においての存在感はますます弱くなります。覚醒しなければいけない、ギリギリのタイミング。もう、間に合わないのかもしれない。その意味では、人事でも改革の退路が絶たれています。
昨年(2020年)からコロナウィルス感染拡大の影響もあり、テレワークがあらためて注目されています。今後は、社員が自宅で仕事をする場合、成果や実績で判断する傾向がより強くなります。成果主義は、一段と浸透するとは思います。そうしないと、特に欧米企業と競い合うことはできない。
日本企業の人事評価の圧倒的な特徴は評価が中央化するか、寛大化することです。例えば、5段階で評価する場合、中央値である3にする傾向があります。平均以下である1や2にすると、評価者(通常、直属上司)にかわいそうといった感情が働くのかもしれません。本来は、駄目な人には駄目だと言わないと、中長期的に見ると伸びないはずです。
例えば、2をつけるならば、今後どうしていけばいいのかと本人と向かい合い、説明する必要があるのです。成果主義は、例えば低い評価をつけて終わるわけではありません。踏み込んで、伸びるためにはどうすればいいのか、何をどうするべきかと考えなければいけない。本人の成長のために、厳しいことを言わなければいけないのかもしれない。場合によっては、降格が必要になるのかもしれません。
その意味で、上司と部下はガチンコで向かい合うべきなのです。上司としてはそこまで話し合える関係を作れるかどうか、が問われます。前提として、上司と部下が同じミッションや目標を持っていることが必要です。上司はアメリカンフットボールで言えば、クォーターバック(試合で、攻撃をする際の司令塔)みたいな役割。部下たちにどういうタイミングで何を感じさせたらいいか。どのようにして成長させるか、などを常に考えないといけない。
部下は、貴重な経営資源です。それを使って、チームや部署のパフォーマンスを最大化させることが上司には求められます。そのために中長期的な視点に立ち、育て上げていくことが大切です。私生活などワークライフバランスにも配慮し、心身の健康を考慮し、労働生産性が上がるように仕向けていきたい。
私も、様々な失敗を経て現在に至っているのです。自分は100点と思っていたら、駄目なのではないでしょうか。管理職でも、経営者でも自らのマネジメントを改善していくマインドやスタンスを持ちたい。強みや弱みを客観的に評価できる人が、優秀なのだと思います。自分のことを過大評価したり、過小評価したりしている人は多いですよね。自己評価を正しくできる人は、上司と部下との関係を客観的に見ることができるのです。
これが、冒頭でお話した「使える、使えない」につながってくるのだと思います。上司と部下が同じ目的のチームの一員である以上、互いに相手を思いやれるか否か。ここが、大事なのです。その関係があると、いい上司と部下になれます。
自分を高めることを絶えず意識しながら、自己検証をする。これをやらされ感を感じて行うのではなく、ゲーム感覚で楽しみつつ、自らを高めていけるとよいと思います。
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