2024年11月22日(金)

人事部必見! 御社の研修ここが足りない

2012年9月25日

 売り上げのうち外販比率が高いのが部品事業部。なかでも携帯電話の筐体製造が8割近くを占め、国内メーカーのほとんどといってもよい機種を製造している。携帯電話市場では毎年2回は新製品が登場するように商品サイクルは短い。当然、開発から量産を短期間で終えなくてはならない。短い納期で100万台を超える発注が続く。しかも部品点数は約20あり、部品ごとに金型の設計、製造を経て量産ラインに流す工程が行われるが、どこかで不具合が発生すると納期が遅れる。量産化ラインで見つかれば、不良品の台数はすぐに数十万台になってしまう。損害額が大きすぎる。この製造過程での失敗は絶対に許されず、新人に任すことはできない。

技術者の喜びを体得しにくい製造現場の改善を

 山形カシオの新入社員は、高校、大学、大学院の新卒者で毎年5人~10人程度。バブル期の半数になっているという。就職氷河期でやっと就職したにもかかわらず、毎年のように退職者が出続けていた。その要因として考えられるのが、技術者の喜びを体得しにくい製造現場にあったようだ。その状況改善に立ち上がったのが部品事業部。研修期間中の新人育成期間内で業務外の製品を作らせることにした。設計開発、調達、組み立て納入までを期間内に終わらせる作業を新人たちが協力して行う。この取り組みを始めた年から部品事業部に配属された新人からの退職者が出なくなった。モノを作る喜び、任される責任感などがやりがいにつながるのだろう。

新人プロジェクトで作られた製品 (撮影:著者)

 この成果をもとに2005年から正式な新人研修に組み込み全社導入を始めた。新人プロジェクトの具体的な説明の前に山形カシオの研修内容に触れたい。新入社員研修は4月入社時から12月までの9カ月間。入社1カ月間は、人事担当による社会人基礎研修など一般的な座学。その後の8カ月間が製造現場に入り部門ごとの仕事を知る実務研修になる。研修の狙いは、早期に戦力として事業運営に貢献できる人材を育成すること、EMS(電子機器の受託生産サービス)や成形金型に必要な専門的知識を身につけることだという。

 この実務研修中に新人プロジェクトが同時進行する。新人たちは金型設計、生産技術、成形技術などの各部門で実務研修を受ける一方で、与えられた課題に応える製品を自分たちの力だけで作らなければならない。製品を作るには大きく分けて部品調達、仕様デザイン、製品・機構設計など16項目がある。これらの流れを確実にこなしながら量産までを決められた納期内に終わらせなければならない。どこかで失敗すれば、やり直しになり納期が間に合わないことになる。失敗を学ばせることができる。


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