大正時代に創業した老舗企業だが、体系的な研修を導入したのは昨年からという。主力の守谷工場(茨城県)内に設立した研修センターで1年間の新入社員研修を実施、その後も同工場内の製造部門に配属され2年間にわたり現場作業に従事する。広義でみれば研修期間は3年間に及ぶ。その間は全員が寮生活。ここでの「共同体」の醸成が世界で通用する人材を育て、部署を超えた結束を作るという考え方だ。技術習得だけでなく将来の連帯までを展望した独自の研修システムといえる。
【会社データ】 株式会社前川製作所
創 業 :1924年(大正13年)5月15日
資本金 :10億円
代表者 :田中嘉郎
所在地 :東京都江東区牡丹3-14-15
社員数 :2,200人(国内グループ会社含む)
工 場 :守谷工場、佐久工場、東広島工場
グループ:国内8社
海外拠点:33カ国、87拠点
事業内容: 産業用冷凍機、各種ガスコンプレッサーの製造販売など
深刻化する技術者不足に対応
前川製作所は、コンプレッサーをベースにした圧縮技術、低温技術、熱交換技術、流体技術などから作り出す冷蔵倉庫、空調システム、環境・省エネ機器などの製造から販売、サービス、コンサル、流通業務まで、製品の川上から川下まで、さらに河口までを一貫して自社で完結する機械メーカーだ。それぞれの事業部門は、顧客の要望に合わせて開発、発展する形をとってきた。このため前川製作所は長期間にわたり、部門ごとに会計上も税務上も完全な別会社として独立法人化(独法)していた。これを2008年に一社体制へと変更している。
独法時代の新人研修は、1カ月の基本的な研修後に現場に配属されOJTで先輩から技術を受け継ぐ形で進められてきた。しかし、一社体制以降に進められてきた海外展開の強化などで技術者不足が深刻化していったという。OJTに頼り体系的に人材を育ててこなかったことが、外に出せる技術者不足を招いてしまった。こうして主力工場の守谷工場内に研修センターを昨年1月に発足させ、本格的な人材育成の基礎を身に着けてもらうことにした。講師陣は5人。いずれも経験豊富な60歳以上のベテラン技術者を集めた。