WEDGE REPORT

2021年4月2日

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ジャガナート・パンダ

インド国防問題研究所(IDSA)東アジアセンターリサーチフェロー

デリー大学中国・日本研究科にて哲学修士、政治学部にて文学修士取得。2006年からIDSAに所属し07年、ジャワハルラール・ネルー大学国際学部東アジア研究センターで博士号を取得。スウェーデン安全保障開発政策研究所(ISDP)名誉フェロー等を兼任。

スリランカに求められる
「デュアルトラック」外交

 いずれにせよ、スリランカや、特にインドをはじめとする戦略面での利害関係国にとっては、中国が債務軽減と引き換えに手に入れたインフラと一帯一路事業を軍事利用するかもしれないという不安が、国際的緊張と中国政府が貫く修正主義によって助長されている。

 これらを念頭に、スリランカは2018年、海軍の南部司令部をゴールからハンバントタ港へ移転し、同港での海軍プレゼンスを強化した。とはいえ、安全保障面での懸念に適切に対処し、国内での一帯一路事業に対する世論の信頼を回復するためには、政策当局、学者やアナリストによる継続した監視が必要である。

 スリランカ自身は、これまでのように外国からの借り入れに依存するのをやめ、貿易と投資に重点を置く必要がある。そのためには、大規模な軍を保有しない小国のスリランカは、より大きな自律性をポスト・パンデミックの世界で戦略的に追求すべきだ。

 米中対立は過熱し、さらにスリランカにとって最大の貿易相手国、インドも中国との緊張を抱え、対立関係が続いている。そのような状況では、小さな島国のスリランカは、経済面よりも安全保障面での国益を守ることが必要不可欠になるだろう。

 これは、確かな基盤を持ち、入念に練られた「デュアルトラック」外交、すなわち地政学的現状に即し、インド太平洋地域と中国の両方を大きく関与させる形をとることで、実現できる可能性がある。

 つまり、ポスト・パンデミックに台頭する国際秩序において、スリランカの外交政策の指針は、日豪印が構築を目指す「サプライチェーン・レジリエンス・イニシアティブ」といった枠組みへの参加や、インドやモルディブとの海洋安全保障パートナーシップの構築、米国との政治関係の強化や、インド太平洋諸国との貿易関係の深化を重視したものでなくてはならない。中国の一帯一路との関わりが予定通り前進し続けるにしてもだ。

Wedge4月号では、以下の特集を組んでいます。全国の書店や駅売店、アマゾンなどでお買い求めいただけます。
■「一帯一路」大解剖 知れば知るほど日本はチャンス
PART 1     いずれ色褪せる一帯一路 中国共産党〝宣伝戦略〟の本質
PART 2     中国特有の「課題」を抱える 対外援助の実態            
PART 3     不採算確実な中国ラオス鉄道 それでも敷設を進める事情    
PART 4  「援〝習〟ルート」貫くも対中避けるミャンマーのしたたかさ  
PART 5     経済か安全保障か 狭間で揺れるスリランカの活路       
PART 6    「中欧班列」による繁栄の陰で中国進出への恐れが増すカザフ
COLUMN   コロナ特需 とともに終わる? 中欧班列が夢から覚める日
PART 7      一帯一路の旗艦〝中パ経済回廊〟
PART 8     重み増すアフリカの対中債務
PART 9     変わるEUの中国観 
PART10    中国への対抗心にとらわれず「日本型援助」の強みを見出せ

  
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◆Wedge2021年4月号より

 

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