世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2021年3月29日

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 昨年2月のトランプ政権とタリバンとのドーハにおける合意によれば、米軍は5月1日までに完全に撤退することになっている。

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 しかし、大きな問題が残っている。タリバンはいまだにテロ行為を続けているし、アフガン政府とタリバンとの和平交渉は進展を見ず、アフガン統治の将来は描くことができていない。このまま米軍が撤退すれば、アフガンは内戦に陥り、タリバンがアフガンの大部分を制圧すると見られる。人道危機も引き起こされるだろう。

 バイデン政権は、アフガン紛争の政治的解決を探るべく、外交努力を続けている。3月6-7日の週末に米国務省は、タリバンとアフガン政府に対し、アフガン紛争の政治的解決を明確な形で提示した文書を渡した。アフガンのニュース機関TOLOが、文書の全容を報じている由である。3月11日付けのワシントン・ポスト紙の解説記事‘The leaked U.S. plan to end the war in Afghanistan’によれば、リークされた文書には次のような重要な点が含まれているという。

1.憲法:新しい憲法が起草される。
2.誰がアフガンを統治するか:現在のアフガン政府を暫定政府で置き換えることを提案。
3.選挙の問題:暫定政府の設置の後、選挙が行われることを提案。ただし、選挙の時期については特定していない。選挙後、本格政府に移行。
4.戦闘をいかに終わらせるか:合意が署名された後、数時間で休戦が行われることを要求。タリバンに、パキスタンから軍事的構造物等を排除することを求める。

 米国の提案について、アフガン政府の当局者は、新しい憲法がタリバンに将来の政府で強い力を獲得する道を開くと懸念しているらしい。この懸念は当然であるが、タリバンは、いずれにせよ新しい政府で強力な地位を占めることが予想される。タリバンは、1990年代初めの内戦状態の中で勢力を伸ばし、1996年首都カブールを制圧、タリバン政権を成立させた。タリバン政権は9.11事件を契機とする米英軍のアルカイダとタリバンに対する軍事攻撃で、2001年11月「北部同盟」がカブールを制圧するまで続いた。このようにタリバンはアフガンの統治をした経験がある。

 選挙については、タリバンは、選挙は西側の押し付けであるとして拒否してきたが、結局受け入れた。それは、選挙無しの政治プロセスが考えられない一方、タリバンとしてもいずれ選挙を通じても勢力を拡大できると踏んだためと思われる。

 草案は、タリバンに対しパキスタンを聖域としないよう求めているが、タリバンはそのような聖域はないと言っており、パキスタンはタリバンを支援していないと言っている。しかし、タリバンとパキスタンが切っても切れない関係にあることは疑いない。1980年代のソ連のアフガン侵攻の際、アフガンの多くの難民がパキスタンに逃げ込み、その中に将来のタリバン要員もいた。タリバンのメンバーがイスラム神学生として教育を受けたのはパキスタンであった。

 バイデン政権は、この国務省の文書を基礎に、アフガンの和平の定着に関与していくことになる。米政府も米国民も史上最長の戦争から早く足を洗いたいと考えているが、和平の実現無しにアフガンからの米軍の完全撤退は考えられない。

  
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