「中国の夢」にとっての敵は依然として内外に巣食っている
共産党建党50周年の2年前の1969年、狙い通りに政敵の劉少奇を粛清した毛沢東が「勝利の大会」と讃えた第9回共産党全国大会が開かれている。
この大会で決議された政治報告、党章程、新聞公報などの重要文献を読むと、当時の「中国の夢」にとっての敵が浮かび上がってくる。たとえば「社会主義大家庭論」であり、「入党做官」という考えだ。
当時、「社会主義大家庭論」については次のように説かれた。
ソ連修正主義叛徒集団は「社会主義」の旗を振りながら帝国主義の振る舞いをしている。アメリカ帝国主義と結託し、自らの世界覇権に向けて、なりふり構わずに懸命に策動する。アジアにおいてはモンゴル人民共和国を殖民地に変えてしまい、ヨーロッパにおいては東欧の多くの社会主義国家を属国に組み入れた。ソ連修正主義が鼓吹する「社会主義大家庭論」とは、この種の帝国主義の侵略と略奪政策を合法化すべくデッチあげた“理論”に過ぎない。
こういった「大家庭」の構成員は永遠にソ連修正主義の殖民地や属国であり続けなければならない。
次に「入党做官」だが、これを劉少奇が撒き散らした暴論だと強く告発した。
大部分の共産党員は生きては革命のために戦い、死しては革命のために献身する。全身全霊で人民に服務し、壮麗無比な共産主義のために人生を燃焼し尽くす。党員は1人残らずに毛主席の立派な戦士である。だが劉少奇は「入党做官」を掲げ、入党して幹部に出世せよと説いた。これは政治的・組織的に共産党員の魂を腐乱させ、資本主義復辟の準備をなそうとするものだ。
――つまり毛沢東版「中国の夢」の実現を妨げるものは国際的には「社会主義大家庭論」であり、国内的には「入党做官」という立身出世主義だった。
1990年代初頭の「ベルリンの壁」の崩壊と共に、国家を束ねた形での社会主義陣営は地上から消えた。であればこそ「社会主義大家庭論」はすでに歴史的には死語になったと見てもよさそうだ。だが、それは形を変えて「一帯一路」として蘇っているのではないか。一方、中国国内に目を向ければ、幹部による汚職・不正が絶えない以上、「入党做官」は一向に克服されないままに生き延びていると見るべきだろう。
どうやら「中国の夢」にとっての敵は、依然として内外に巣食っているようだ。