2024年11月22日(金)

WEDGE REPORT

2021年4月1日

ニューヨークでは8倍に急増

 ニューヨーク・タイムズがカリフォルニア州立大学の憎悪犯罪調査などの結果として報じたところによると、全米の16の大都市では2020年、前年と比べてアジア系住民に対するヘイトクライムが約2.5倍に増えた。特にニューヨークでは、8倍以上の28件に急増した。今年はすでに30件を上回っており、さらに増える見通し。

 全米でアジア系住民に対する憎悪犯罪が増えている理由について、民主党や識者の多くはトランプ前大統領が再三、新型コロナウイルスを「中国ウイルス」と呼んで中国非難の道具に使ったことを挙げている。人々はウイルスの感染や、行動制限、失職などに対する不満のはけ口を「中国ウイルス」というレッテルに求めたとも指摘されている。

 欧米の人々には中国人も 日本人も区別がつかない。結果としてアジア人全体への差別や憎悪犯罪につながっている可能性が取り沙汰されている。バイデン大統領は16日に南部ジョージア州アトランタの銃撃事件でアジア系女性6人が犠牲になった後、ハリス副大統領とともに現地入りし、「沈黙することは共犯」などとしてアジア系への人種差別や偏見の高まりに危機感を表明してきた。

 大統領はマンハッタンでのフィリピン系女性に対する暴力事件の後、暴力被害の申告を容易にして事案を幅広く把握し、連邦捜査局(FBI)を通じて全米の警察官の憎悪犯罪に対する意識を高めることなどを柱とする新たな取り組みを発表した。また司法省も向こう1カ月かけ、アジア系住民に対する暴力をどう抑止していくか、具体策を検討することになった。

 だが、こうした憎悪犯罪を撲滅することは極めて難しい。アジア系に対する嫌がらせや暴力行為が「黒人の命も大切だ」という差別撤廃運動を掲げる黒人からの事案も多いことがその難しさを物語っている。しかも、米国だけではなく、欧州や中東などでもアジア系に対する差別や偏見が広がっている。フランス政府はアジア系住民への差別や憎悪がかつてなく強まっていると警告しているが、「アジア人狩り」などという物騒な言葉がネット上などで飛び交っており、現地の邦人らにとっては警戒と我慢の日々が続く。

  
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