現場は綱渡りのやり繰り
一方、日本人選手の〝投壊危機〟も深刻だ。今季先発ローテーションの柱になると目されていた平良拳太郎投手が28日の巨人戦で先発登板中に右ひじの張りを訴えて途中降板し、その翌日に登録抹消された。加えてエース左腕・今永昇太投手は昨年11月に左肩を手術し、先月31日にイースタン二軍戦で復帰登板を果たしたとはいえ、万全な状態での一軍先発ローテ復帰はまだ時間を要する状況。2018年に新人王を獲得した左腕・東克樹投手も昨季開幕直前の2月にトミー・ジョン手術を受け、現在もリハビリ中で長期戦線離脱を強いられている。
リリーフ陣も厳しい。長年に渡って絶対守護神としてチームを支え続けてきた山崎が昨季から絶不調に陥り、今季も完全復活を印象付けられるような投球はここまで見せつけることができていない。さらにロングリリーフもこなせる左腕・石田健太投手も今季は開幕から試合をぶち壊す背信投球が続いており、苦しんでいる。エスコバーが隔離期間を経て一軍に合流するまでは〝勝利の方程式〟の継投もなかなか定め辛く、三浦監督率いる現場は綱渡りのやり繰りを当面の間、強いられそうだ。
昨オフには梶谷隆幸外野手、井納翔一投手の生え抜き2人が国内FA権を行使し、巨人へ移籍している。投打の主力がチームを去ってもフロントはとくに大物の戦力補強には動かず、新たに獲得した注目株と言えば、梶谷の人的補償で巨人から田中俊太内野手、前所属球団を戦力外となった風張蓮投手(前東京ヤクルトスワローズ)と宮国椋丞投手(前巨人)、そして前出の新助っ人ロメロの4選手ぐらいだ。その上で外国人選手の来日遅れによってチームは随所で機能不全に陥ってしまっているのだから勝てるはずもなく、開幕からの泥沼連敗地獄はむしろ必然の流れだったと言えるのではないだろうか。
近年のベイスターズでは他球団と対象選手の争奪戦になってもマネーゲームは極力避け、入念なドラフト戦略や外国人選手の〝掘り出し者〟でチーム編成を図るのが基本姿勢だ。この日、プロ入り後初のヒーローインタビューに臨んだドラフト2位ルーキー・牧秀吾内野手(中央大)が開幕から9戦目で早くも3度目の猛打賞、リーグトップタイの10打点も叩き出すなど新人離れした活躍を見せているのは、間違いなくベイスターズ独特のドラフト戦略の賜物と言えるだろう。牧は今季の新人王も十分に狙える逸材であり、今後のさらなる飛躍が実に楽しみだ。だから、そこに異論を挟むつもりなど毛頭ない。
しかしベイスターズのフロントが今季開幕直後の記録的な大失速を猛省して検証することなく、ルーキーのブレイクだけにとらわれて手放しで喜んでいるようではこの先も1998年以来のリーグV、日本一は遠のいたままだろう。従来の編成方針だけに頼るスタイルはあらためて見直す時期に直面しているような気がする。ベイ党が勝利の美酒に酔いしれる日を一刻も早く迎えるためにも、ぜひ再考してほしい。
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